現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

ある老農の憤怒


25日(月)
久しぶりに犬の散歩の時、朝日を見る。
今日は事務仕事の続きで午前中は一万円札から一円玉までをあれこれ触らねばならぬ仕事。
農協で待っている間にちょっと読んだ「全国農業新聞」という見慣れぬ新聞。2月8日付の一面の下に農民・作家 山下惣一氏の文章が載っていた。以下その要約。

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飲み仲間のYさん( 88歳)が新年会の二次会で若い頃の話をした。徴兵検査前の18歳前後「中堅農村青年講習所」なるものが地元にあり、あの山崎延吉の指導を受けたと言う。同氏は愛知県の安城農林学校の校長で同地域に酪農を導入して「日本のデンマーク」を築いたことでも知られる戦前の有名な農民指導者だ。のちに「満蒙開拓青年義勇軍」を送り出すことになる加藤寛治が帝国農会を辞した後、同校の教官となった経緯は加藤寛治全集第一巻の「日本農村教育」に出ているが「大和魂」が強調され「皇国農民育成」が国是の時代だった。
講習所で毎朝全員で合唱した歌をYさんが披露してくれた。タイトルは忘れたそうだが記憶による歌詞はこうだ。

1 我は農民御国の宝 農は尊い神の業 遠つ御祖の稔りのままに 道は直なる農の道

2 我は若人高鳴る胸に 農を興せの血は踊る 我は土の子御国の為に 土を活かせの鍬をふる

3 日にはさらされ雨には打たれ 汗で磨いた鉄の腕 泥田這えども誠の人は 泥にや染まらぬ日に染まる



Yさんは田2ヘクタール、畑50アールの篤農で農業委員、農協理事を長く務め、まもなく定年の長男が後を継ぐ。そのYさんが言うのだ。「食糧難の時代に百姓はクズ米食って供出した。その米は誰が食ったか。今ならやらんぞ。いまにみていろ。」農一筋に生きてきた老農の憤怒である。 Yさんが帰ったあと70歳代の若手で「農民は国の宝とおだてられ、骨身を削って働かされた時代の百姓と、まるで国のお荷物のように言われる今の時代を生きている百姓とどっちが幸せか」を議論して盛り上がった。

時代が違う、価値観が変わった、農業国から工業国に転換したなどと軽く言うな。今の百姓にも生涯をかけて家産を守り地域を支えてきた自負も意地も魂もあるぞ。結論は「日本農業より我が家の農業」だった。

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ちょうど総理大臣がTPP交渉へ参加したい、政府に一任して欲しい、などと言ったとニュースになっている時なので、なんとなく、心に沁みる。いつの時代も百姓は・・・。と。

26日(火)
今日も朝日をおがむ。朝は放射冷却で冷え込んだが、よい天気になりました。夕方から曇ってきて、夜には雨になるらしいが。


午前中は精米やらなにやらかんやら。


午後は今日も銀行や農協に行ったり。