現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

杉山修一『すごい畑のすごい土』と十河進「映画と夜と音楽と…669 父

杉山修一『すごい畑のすごい土』

11日(水) 建国記念日
今年も農事組合の仕事をすることになったので、新しい役員さんに配る初役員会の文書を作成して、封筒に入れ、お配り申し上げる。封筒の宛名を久しぶりに筆ペンで書いてみた。うーむ。下手な字で笑えるのだが、下手でも、笑えても、書いてみるということにする。
午後は、作業所のトタンの庇から落ちた雪を一輪車で裏の川まで捨てる。
おかげでビールがうまい。
今日一日で、ずいぶん雪の嵩が減る。


12日(木)
杉山修一『すごい畑のすごい土 無農薬・無肥料・自然栽培の生態学』(幻冬舎新書)読了。うーむ。杉山先生はわかりやすく書いたとあとがきに書いておられますが、ちょっと難しく感じました。たぶん僕の理解力が足りないのだと思いますが・・・。要するに寝る前の布団に入ってからの読書には、ちょっと向かなかったかも。メモが必要でしたな。慣行栽培と自然栽培の違いということでいえば、慣行栽培のことはよくわかっても、自然栽培のことは、もう一つよくわからない、という感じ。「緑の革命」のことと土の微生物が大事ということはよくわかったけれど、土の微生物そのもののイメージはもうひとつはっきり結べないという印象。ま、そのことはこの本の趣旨からは離れてしまうからなのでしょうけれど。



最後の第七章 自然栽培の未来の最後のところ。
何よりも自然栽培の利点は、生産者が受け身から主体へと変化することです。
マニュアルが通用しない自然栽培では、現場での観察と判断が重要で、生産者の裁量による工夫と改善が必要とされます。
当然、失敗の可能性も増えますが、自然栽培を始めたほとんどの稲作農家は農業が楽しくなったといい、田んぼにも頻繁に顔を出すようにもなります。日本の農業は高齢化が問題となっていますが、自らの熱意と能力を試すことのできる自然栽培は、むしろ若者にとっての新しい魅力的な分野になるのではないでしょうか。
自然栽培はまだ確立した技術ではなく、収量性が低く不安定であるなど解決すべき多くの課題があります。
自然栽培が利用する生物の力植物土壌フィードバックや生物間相互作用ネットワーク植物免疫などは、生物学の最新の知識と最先端の技術を使わなければ解明できない課題です。
科学的解明は自然栽培の技術の確立に必要ですが、必ずしも科学的解明を待つ必要はありません。
自然栽培はボトムアップ的技術なので、常に現場での生産者の裁量と判断が求められ、経験に基づく技術の蓄積が可能です。それら経験的技術を互いに共有することにより、現場での技術の改良が科学の先を行くことも可能なのです。
慣行栽培に見られる国県農協農家という縦の関係を通じたトップダウン型ではなく、生産者間の横のつながりが、自然栽培の今後の成功の鍵を握っています。

というあたりはよくわかりましたし、僕も感じていますし、心に響きました。



さて。
辻井農園では、Twitterのアカウントも持っている。さっき、Twitterの設定を変えようと久しぶりに立ち上げたら、不意に十河進氏のツイートが流れてきた。ブログの更新「映画と夜と音楽と…669 父を継ぐ」だという。
もう何年前になるのだろうか、僕は十河進のコラムのファンになり、ブログはもちろん、『映画がなければ生きていけない』というブログのコラムを集めた本も買って読んでいた。えー、ハードボイルドなんです、十河進のコラム。今回のブログのタイトルも「父を継ぐ」ですからね。ええ、かっこいいでしょ(笑)。ま、詳しくは書きませんが、ディック・フランシスとフェリックス・フランシスの話から、ジャック・ベッケルとジャン・ベッケルの話になります。ともに父子の作家であり、映画監督です。
フランシスの競馬シリーズは、もうあまりにも有名なのだが、実は一冊も読んでいない。若い時は競馬というギャンブルに抵抗があったような気がする。今では馬券を買ったりしたこともある大人の男だったりするのだが(笑)、ま、縁がなかったのだ。うーむ。この競馬シリーズの40冊を読むのがいいのか、どうかは、わからない。というあたりが、やはり縁がなかったんだろうな。


ジャン・ベッケルの「画家と庭師とカンパーニュ」のDVDを買ったのは、いつだったか。たぶん十河進氏のコラムを読んだのだと思うが、これが、あーた、とてもいい映画でした。ダニエル・オートゥイユもいいのだが、とにかく畑や庭がきれいなんだなぁ。今日の十河進氏のブログというかコラムで「クリクリのいた夏」も「ピエロの赤い鼻」もジャン・ベッケルの作品であることを思い出す。いえ、未見なんですけど、観たいと当時思っていたんですが、当時地元のレンタルビデオになかったんですよね。それで観ることが出来なかった。


あれこれあった結果ですけれども、僕も父の仕事を継いで農業を始めました。稲の生育を観察する眼は、まだまだ父にはかなわない。小学校の子供の頃から田んぼをしている父とは、経験値がぜんぜん違うので、一生追い抜けないような気もする。ま、でも、父とはいささか違う無農薬有機栽培をはじめて、僕は僕なりに稲の生育を見る眼を養っていかねばならないのだ。
どこでも、いつの時代でも、父子の関係は、なかなか微妙です。


久しぶりに十河進の「映画と夜と音楽と・・・」を読んだのだが、今回669が「父を継ぐ」、667は「背中をあずける」、664は「意地を貫く」である。ね、なかなかハードボイルドでしょ。


お客様からお礼と励ましの封書のお手紙ををいただく。うれしく、またありがたい。ありがとうございます。