現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

ハクモクレンと畦塗りと平安時代のますら男


朝から晴れる。ハクモクレンもきれいに開花して、青空に白が映えています。
午前中はお米の精米など。
それから昨日畦塗したところの畦の隅や尻水戸のコンクリートの際などをスコップで手直ししたりする。
風もあまりなくちょっと動くと汗ばむ。



午後は畦塗り。
午後から雲が多くなり、風が強くなる。畦塗り機を付けているトラクタは、フルオープンのトラクタでキャビンのついていないタイプ。午前中が暑かったので、ヤッケの下、服を一枚脱いできたので、この強風がこたえた。寒いのだ。フードを被り紐をきつく締めたのだが、・・・。うーむ。参ったぜ。


夜は寄り合い。


菜種油の濾過もゆっくりではあるが進行して、なんとか今日は全部終了。なかなかきれいな菜種油に精油できた。ような気がする(笑)。約2Lの原油精油して1.5Lほどの菜種油になりました。ふむふむ。まあ、沈殿物混じりの油は昨日のブログで紹介したように、灯明として利用もできないことはないですな。
しかし、こうして油ができてしまうと、タラの芽の天ぷらをするのが目標ということにしていましたが、タラの芽が出てくるまで、待てないかもしれませんな(笑)。純国産無添加純正菜種油の使い道を探ってみなくてはいけません。



ネット上では、ソラマメの料理の画像が出回り始め、今がソラマメの旬のようなことが書いてあったりするのだが、ちょっと気が早すぎませんか?うちのソラマメはまだ花も咲いていませんがな。あたたかい地方では、あるいはハウス栽培では、そろそろ出回り始めるのかもしれませんが、今が旬、は言い過ぎでしょう。“♪ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待てお兄さん!”と言いたくなりますがな。旬というのはやはり露地ものが大量に出回り始めるときでしょう。うちのソラマメは無農薬・無施肥・無耕起の自然栽培ソラマメ。露地ソラマメの王道を歩んでおります。


今日、九条ねぎ、太ネギ、細ネギと三種類のネギの種を購入しました。ネギは比較的初心者にも作りやすそうだし、僕は大好きだし、うどんやそばやラーメンや豆腐の薬味としてもたくさん使うし、ねぎ焼きも大好きなので、この春は無農薬・無施肥・無耕起の自然栽培ネギを播種する予定です。むふふふふ。


さて。


    ますら男がさす幣(みてぐら)は苗代の水の水上まつるなるらん    源 有房


源有房平安時代後期の人です。幣(みてぐら)って、わかりますかね、神さんに奉るものの総称だそうですが、御幣ですね。あの神事の時に使う和紙を折って段々の形にしますね。あれです。
この歌は「ますら男」の解釈が肝なんですな。普通「ますらを」と言うと「立派な男子。強くて勇ましい男子。(「たをやめ」の対)」ということになるのです。ところが日本の中世の言葉の音韻や意味内容や用法などがわかると言われている『日葡辞書』にはこんな風に記述されているそうです。「マスラヲ 詩歌語。すなはち、山の猟師。山びと。あるいは、狩人。」と。
丸谷才一は「注目に値するのは「詩歌語」として性格を規定していることである。貴族たちは牧歌的趣味に促されて和歌に山人をあしらふとき、この雅語を用ゐた。
山人が山田に苗代を作り、水口に幣をさす。その幣は何を祭るのかとあやしむ都人は、やがて遠い水上を思ふことになるのだが、苗代から山中の泉へとたどつてゆくその道筋が、農事から神事へ、当代から上古へといふ経路を象徴してゐるやうで、すこぶる楽しい。マスラヲ、ミテグラ、ミズ、ミナカミ、マツルとm音のくりかへしによつて「水」のイメージを強調する技法も見事である。」と解説する。
この辺りでもちょうど今、みんな種籾を水に浸ける浸種、それから催芽、播種という苗代の準備をしているところです。もちろん米作りの作業の一番最初ですから、百姓は慎重に作業をすすめます。だいたいまだ気温が低い時もありますしね。「苗半作」という言葉もあるくらいで、いい苗ができれば、米作りの半分が終わったようなものだ、ということで、苗作りには気をつかうわけですね。だから特に昔は、水口に御幣を挿し、神を祭って、種籾が揃って発芽するのを祈ったのでしょう。「その幣は何を祭るのかとあやしむ都人は、やがて遠い水上を思ふことになるのだが、苗代から山中の泉へとたどつてゆくその道筋が、農事から神事へ、当代から上古へといふ経路を象徴してゐるやうで、すこぶる楽しい。」と僕も丸谷才一と同じようにすこぶる楽しい、感覚はよくわかります。今のようにしっかりとした用水路がなかった時代、それでもちゃんとすべての田んぼに水が回るように考えられていた。平安時代の「マスラヲ」の米作りへの意欲を僕は感じます。


先日、無農薬・無施肥・無耕起の自然栽培の畑の様子を見てみたい、という方がおられましたので、公開いたします。ここにネギの種を播きます。お笑いにならないように。当方は大真面目ですので(爆)。