現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

終日の雨とデジタルとアナログと『ちゃぶ台』

『ちゃぶ台』創刊号

終日、雨。といっていいのではないか。母が「秋じまいはたいてい毎年よく晴れるンやけど、今年はあかんねぇ。ほんまに。」と朝、言っていたが、ま、いろいろありますわな。


デジタルとアナログ。もちろんデジタルは処理がしやすいから使いやすいし便利なことは確か。そういう意味ではアナログは足下にも及ばないけれど、でも、いいとか悪いとか好きとか嫌いとかいう話になると、これは別物。
デジカメでなくてフィルムのカメラで、自家現像、自家プリントしておられる方もまだまだたくさんいらっしゃるでしょう。昨今のレコードのブームもありますね。機械式の時計や万年筆、ツーシーターフルオープンのライトウエイトスポーツカーとか。


「手を忘るな。」とおっしゃったのはメソポタミアのどこかの国の皇太子だったか?開高健に教えてもらった格言・名言の一つなんですが。デジタル化というのは、要するに、手を忘れよ、ということですね。デジタル化はスイッチを押すという方向への流れですから。もちろん、スイッチを押すにも、キーボードを叩くにも手や指は使うんですが。
「手を忘るな。」というのは、つまり、手を動かすこと、指を動かすこと、身体を動かすこと、手仕事、身体仕事、肉体労働を忘れるな、ということだと思います。実際のところ、僕の場合、手仕事というか肉体を使う百姓仕事は、家庭菜園というか、ちいさな畑ほどの面積ならいいのですが、田んぼにでると、畦一本が100mとかになることもあるので、鍬やスコップを使う仕事はしんどくて、できたらしたくないですけど。ま、「手を忘るな。」ということはよくわかります。


私なんか、メモをとる代わりにスマホで画像にしてしまったり(ま、これはデジタルの情報整理術としては、ありだと思うのですが。)鉛筆やボールペンの利用もずいぶんと減りました。
その反動というわけでもないと思いますが、そのかわりに妙なところで万年筆や筆ペンで字を書いたり、スケッチブックや手帳に落書きをしてみたり、というのがおもしろかったりします。妙なものですね。妙なものだな。


セーラー万年筆が出している「ふでDEまんねん」という妙な万年筆で今日は字を書いてみました。よく観るとわかりますが、この万年筆のペン先は曲がっているんです、最初から。で、万年筆の角度を変えると字の太さが加減できるので、筆で書いたような文字が書けるという、そういう宣伝文句の万年筆です。久しぶりに出してきて書いてみました。おもしろいのです。文字の形はともかく、線の太さの具合は確かに筆っぽいところもありますね、そうでもない?(笑)。インクは黒にしてみたのですが、ブルーブラックとか、青系にしたらどうなんだろう?うーむ。


ミシマ社の「ちゃぶ台」という雑誌がおもしろいよ、と教えてもらったので、創刊号と2号を注文しておいたのが届く。今、創刊号を読みはじめて2/3というあたりですけれど、これが、あーた、いいです。おもしろいです。えー、メモしたくなる文章やページがいくつも出てきました。創刊号についている帯には「お金にも政治家にも縛られることなく 自分たちの手で、自分たちの生活、自分たちの時代をつくる。移住 仕事 生まれつつある未来のちいさな形」とある。いいねぇ。最初の方に内田樹氏の講演の速記録が載っています。タイトルは「街場の農業論〜序」おもしろかったです。農業と市場経済というふたつは食い合わせが悪い、とおっしゃる。食い合わせが悪いから軋みが出る。その軋みを全身で受け止めているのが百姓ということになるのでしょうか。
それから西村佳哲氏の「今までにない就活」というインタビュー記事。「人づきあい」っていう言葉はありますが、「自分づきあい」っていう言葉は使いませんね。「人づきあい」の大切さはいろんなところで説かれますが、西村氏は「自分づきあい」の時間を持つことの大切さを話しておられます。要するに一人で過ごす時間ですね。うんうん、よくわかるなぁ(笑)。
それから西村氏の言葉でもう一つだけ。
「軽井沢に引っ越しした友人がいて、旦那さんは北海道出身、奥さんは都市部の出身。軽井沢でもいわゆる田舎っぽい人づきあいはあるみたいで、なんかのときにちょっと何かをわけてもらったり、手伝ってもらったり。そういうときにすぐ”なにかお礼を”みたいになる奥さんに旦那さんが、そうじゃないんだって諭したって。”関係をすぐ清算しちゃダメだ”。よくしていただいたことはちゃんと覚えておいて、いつか機会があったときに返せばいいんだよ、と。」
いいなぁ。もちろん、その時その時、そのつどそのつど、きちんとお礼も言うのは大切なことだけど、等価交換で精算してしまって、いつ縁が切れてもいいんだ、みたいなのは、うーむ。いや、まあ、お礼を言いつつお返しをして、これでチャラにしとこか、なんて言うことはあるのだけれど、それでもちゃんとよくしていただいたことは覚えておいて、なにかのときに返す、という意識は大事にしているところではあります。あははは。コッポラの『ゴッドファーザー』にも同じようなセリフがありましたな。ええ、仁義ということですわな。
ミシマ社って、どんな会社なんだろう?