現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

畦畔のカラスノエンドウとECのセミナーと牡蠣を食すことと『日本婦道記』


 雨上がりだが朝から快晴。雨上がりと書いたが、夜中にけっこうな雨音がしていた。でも朝の散歩で外に出たら、小谷山や湖北の山々の上のほうがうっすらと白くなっていた。山の上は春の雪だったんですね。
 畦畔は冬の間ずっと枯れ草色でしたが、オオイヌノフグリヒメオドリコソウも出てきたし、こうしてカラスノエンドウ(?)が伸びてくると盛り上がってきて、だんだん枯れ草色から緑色に変わっていきます。


 午前中は精米など。
 午後は京都へでてECのセミナーに出てみる。ECというのはelectronic commerceということで、電子商取引ということになるそうだが、まあ、インタネットを利用した小売りビジネスということですな。ええ、つまり辻井農園のネット販売もECなんですな。こういうセミナーがあちこちで開催されていることは知っていたし、案内メールも何度も届いていたのだが、まあ、この手のセミナーは無縁だと思っていたので、参加したことはなかったのです。まあ、参加している時間もなかったのだが、今回はメールのタイミングがよかったんだろうなぁ、ま、なんにでもわりと興味だけはもつ私なので、この手のセミナーとはどういうものなのか、のぞいてみようと思ったわけですな。
 ええ、参加してみて僕がインターネット小売りビジネス業界のことをまったく理解していなかったことはよくわかりました(笑)。もっとも最初からわかっているとは思ったことなどないんですが。なるほどなぁ、と思うこともいくつかはありましたが、講師の先生は立派な経歴の方でIT業界EC業界風のいかした服装で登場されました。早口で盛りだくさんで、これ以上は会員になってくださいな感もあって、ほとんどは何の話なのか半分もわからないという感じ(笑)。ええ、いい勉強にはなりました。2時間半のセミナーで参加料は1000円。うーむ。
 まあ、しかし、なんというか、EC業界も参入と撤退がものすごく激しい世界だったんですね。まあ、当然かぁ。辻井農園はネット小売り業界にこっそり参入してひっそりともう10年ほどになります。まあ、ほとんど自前でネット販売してきたわけですが、10年ほど見様見真似で誰からも教えてもらってきていないのに、撤退することもなくやり続けられたことは、けっこうありがたいことだったんですな。まあ、本業は農業で、安心して食べていただけるおいしいお米をつくる、っていうのを標榜していますが、要するに商品の製造、つまり生産から販売まで一貫した仕事になるのが、一つの強みなのかもしれないと今日は思わされたが。うーむ、弱みかもしれないな(笑)。


 京都で生牡蠣と焼き牡蛎とをちゅるっといただく(笑)。ちゅるっのつもりが、ちゅるっちゅるっになったり、ちゅるっちゅるっちゅるっになったり、ぐびぐびになったりしたので、おもいのほか散財。



 京都までの行き帰りは山本周五郎『日本婦道記』(新潮文庫)を読んでいました。数年前に、うん?10年くらい前なのか?黒澤明の映画を集中して観ていた頃、原作にもなっていた山本周五郎も少し読んだのです。おもしろかったですね。ええ、ファンは山本周五郎のことを山周(やましゅう)と呼んでるらしいですな。『日本婦道記』は評判がいいのも知っていたし、ラジオの朗読の番組でも何度か取り上げられているのも知っていました。いや、最初から最後まで聴いたものは一つもなくて、田んぼ仕事の合間で軽トラに乗っているときにほんの数分朗読を聴いただけだったんですが、よい文章なのはすぐわかったし、朗読しているアナウンサーも抑えた読みぶりなりに、ずいぶん気合いを入れているのが感じられるような読みっぷりでした。
 電車と地下鉄に乗りながら読んでいいたのですが、何度も泣けてきて、涙を隠しつつ読んでいました(笑)。電車に乗っているオッサンが本読みながらとはいえ、泣いているところを他人に見せるわけにもいかないので。笑いを堪えるときにも肩がふるえたりするのだが、泣くのを堪えたりしても、肩がふるえたりしますな(笑)。
 『日本婦道記』は1943年(昭和18年)上期の直木賞に推されたらしいのですが、山本周五郎は固辞したそうです。ええ、時代が時代ですからね、戦意高揚とか銃後の守りとか、まあ「婦道」って言葉が、ずっとあった言葉なのか、山周がつくった言葉なのかしりませんが、妻の道、女の道ということですから、今ならまあいろいろ炎上しかねないタイトルかもしれませんね。今の女性が、現代の世の奥様方が読まれたら、「ふざけんじゃないわよ!こんなことやってられますか!しらけるわよ!男の都合ばっかりの嫁じゃないの!ふざけんじゃないわよ!ふん!」となるかもしれません。なるでしょうな。山周が直木賞を固辞した気持ちはなんとなくわかるんだけれど。でも、いいものは、いいですな。ええ、いいものはいいです。一つの世界があります。31もの話があるので、しばらく楽しめそうです。