現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

溝切りと『カメラを止めるな!』と「流星」


 朝からよく晴れる。
 午前中は精米など。それから長男がナタネとヘアピンの播種に向けて溝を切ってくれた。僕は畦畔の草刈りなど。
 うーむ。播種した大麦が芽を出してきてうれしいが・・・。うーむ。あまりきれいに芽が出てきていない圃場もある。やはり圃場が湿っていたところはよくないな。いやはや。


 夜、上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』(2018)をAmazonプライムで観る。あはははは。面白かったです。「最後まで席を立つな。この映画は二度はじまる。」「無名の新人監督と俳優達が創ったウルトラ娯楽作」というキャッチフレーズですが、なるほど。なるほど。この映画は滋賀県民、というか湖北地方の人間にとっては、少し縁のある映画で、上田慎一郎監督は木ノ本町の出身なんですな。中学時代からお父さんのハンディカムで自主映画を撮っていたそうです。なるほど。でもこの映画も高校生の学園祭用の映画のノリというか、ムードがそこかしこに漂っていました。でも楽しめました。


 それから朝飛び込んできた沖縄の首里城の焼失のニュースには、ちょっとショックを受ける。テレビから流れてくる映像も生々しいものだったし。いえ、首里城には個人的な思い出があったものですから。一度だけ少し琉球の城(グスク)の勉強をしたことがあった。もうみんな忘れてしまったけれど、今、ウィキの「首里城」の歴史のところを読むだけで沖縄のおかれてきた状況の一端がうかがわれます。


 さて、今日で十月も終わり、明日からは十一月。この時期になると、ふっと思い出す詩があります。って、カッコつけすぎだけど、この散文詩がだいたいカッコつけてますから(笑)。



      流 星         井上靖
 
 高等学校の学生のころ、日本海砂丘の上で、ひとりマントに身を包み、仰向けに横たわって、星の流れるのを見たことがある。十一月の凍った星座から、一条の青光をひらめかし忽焉とかき消えたその星の孤独な所行ほど、強く私の青春の魂をゆり動かしたものはなかった。私はいつまでも砂丘の上に横たわっていた。自分こそ、やがて落ちてくるその星を己が額に受けとめる、地上におけるただ一人の人間であることを、私はいささかも疑わなかった。
 それから今日までに十数年の歳月がたった。今宵、この国の多恨なる青春の亡骸――鉄屑と瓦礫の荒涼たる都会の風景の上に、長く尾をひいて疾走する一個の星を見た。眼をとじ煉瓦を枕にしている私の額には、もはや何ものも落ちてこようとは思われなかった。その一瞬の小さい祭典の無縁さ。
 戦乱荒亡の中に喪失した己が青春に似て、その星の行方は知るべくもない。ただ、いつまでも私の瞼から消えないものは、ひとり恒星群から脱落し、天体を落下する星というものの終焉のおどろくべき清潔さだけであった。


 やっぱり、カッコいい詩ですな。僕も高校生の時に井上靖の『北国』という散文詩を見つけて、よく読んでいました。当時は井上靖の小説がよく映画化されていたし、NHKの「シルクロード」という番組が大ヒットして、井上靖もよくテレビに映っていました。しかし、久しぶりに読んだら、最後の段落が以前に増して沁みますな。