現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

雨と『東京オリンピック』と『突入せよ!「あさま山荘」事件』とゴーヤの雄花と雌花


6日(月)
 終日、雨。
 書類を提出しに県事務所にいったり歯医者さんにいったけど、田んぼ仕事は出来ず。


 市川崑監督『東京オリンピック』(1965)を観る。2時間49分、途中、休憩が入ります(笑)。まず、感想は、いやー、良かったです。オリンピックが祭であることがよくわかりますなぁ。この映画は記録映画なのか、ということでいろいろ揉めたりもしたそうですが、なるほど。競技の記録とか結果なんてほとんど出てこないのです。そのかわりに美しい聖火ランナーの走りや、選手の顔、表情、足の裏、競技運営のスタッフの姿、雨の日にはスポンジで水取り、応援する観客の表情、自転車のロードレースなんて、はじめから応援する八王子の沿道の人にピントを合わせて、選手はもうビュンビュン走っていくから流れていくばかりで、選手の姿なんて映ってないんです。でも、美しい。ほんとうに美しい。当時僕は三歳で、たぶんテレビもまだなかったと思うので、何も覚えていないけれど、アベベの活躍を覚えています。動くアベベの走っている姿をカラーで初めて見ましたけれど、誰かが「哲人のような」と形容していたのを覚えているんだけれど、なるほど。哲人のような顔で実に美しいフォームで淡々と走ってました。二位で競技場に入ってきて、最後直線の前で抜かれて三位になった円谷幸吉選手の最後のなんとも疲れ切った表情、円谷選手のその後のことを少し知っているだけに余計に哀しい。それからアナウンサーが時々選手の職業を言うんですな、会計士、大工、機械工、高校の先生・・・、アマチュアの競技であることがはっきりわかります。それからバックに流れる音楽がけっこう短調の曲だったりして、たとえば女子バレーの金メダルを獲る映像も短調の曲です。うーむ。これはこれでメダルを獲るまでの厳しい練習に思いをいたらさせられるのですが。思いのほか良かったのが最後の閉会式。「この大会が人類の喜びと親しみのもととなることを祈り、世界の幸福のためにいっそうの熱意と勇気と栄誉をもって、世代をこえ、永遠にオリンピックのこころが伝えられんことを・・・。」アナウンサーは「オリンピック始まって以来、この東京大会のような閉会式がかつてあったでありましょうか。あの秩序正しく華麗であった開会式もすばらしかった。だが、今、今夜、ここで繰り広げられた、国境を忘れ、人種を忘れ、渾然と一体となって、ただ同じ人間として、笑い、親しみ、別れを惜しむ人々の群れ、素晴らしい、ただ、素晴らしいとしかいいようがない、汗はなく、涙がにじんでくるような瞬間であります。世界の平和とは、人類の平和とはこんなものであろうと、胸が熱くなるような瞬間であります。さようなら、さようなら、お元気で、あなたも私もいつかまたお目にかかりましょう。その時までお元気で!」などとアナウンサーは高揚しているのです。
 まだテレビがたぶん充分に普及していなかった時代だったので、映画館はもちろんですが、各地の公民館や小学校の体育館で上映されたんでしょうね、ウィキによると観客動員数は2350万人で事実上日本映画史上最多であるそうです。
 脚本は市川崑和田夏十白坂依志夫谷川俊太郎(!)だそうで、筋書きのないオリンピックであるのに、まず最初に緻密に脚本を書いてそれをもとにオリンピックを撮ったのだとか。なるほど。
 東京オリンピック2020はコロナの影響で一年延期されました。来年の開催もどうなるかわかりませんが、冷静に、普通に今のコロナ状況を考えると来年の開催もほんとうにやる必要があるのかどうか、アスリートや人が集まるのか、と考えてしまいます。もともとは東日本大震災、フクシマの事故からの復興五輪です。商業主義というか、スポンサーのテレビ局の都合で競技の日程や開始時間まで変更されてしまうようなことでは、誰かの、どこかの金儲けのために開催されるんじゃないか、と思わずにはいられません。アナウンサーが高揚して「オリンピックのこころが伝えられんことを・・・」と語ったオリンピックのこころってなんだったんでしょう。オリンピックが決まればオリンピック景気で儲けるひとが出るのは当然ですけれど、少なくとも「オリンピックのこころ」は誰かの金儲けの手段ではなかったはず。


 原田眞人監督『突入せよ!「あさま山荘」事件』(2002)を観る。1972年2月は計算すると僕が小学4年生になります。不思議なことに授業中、校内放送が突然入って、あさま山荘に鉄球がぶつかるようすを教室のテレビで観た記憶があります。もっとも担任のA先生はすぐに教室のテレビの扉を閉めてしまって授業を続けられました。ま、それぐらい日本中がこのテレビ中継を観ていたんだそうで、視聴率は史上最高の89.7%(!)を記録したんだとか。そりゃ、授業中の小学生にも見せるんだから、そうなるよね。原作は佐々淳行連合赤軍あさま山荘」事件』。現場で指揮をしていた人の原作だから、たぶんドキュメンタリーに近いものになっているのだと思います。警視庁と長野県警のもめ事、催涙弾と放水の選択などなど、あちこちにドタバタがあり、それがまたリアリティが感じられました。あと二月の長野の寒さとか。でも完全に警察側からに割り切って作られています。連合赤軍の視点は一切ありません。ま、それはそれでいいのですが。
 主演は役所広司。宇崎竜童、天海祐希伊武雅刀藤田まこと豊原功補など、2002年の映画なので、その他若い人がいい演技をしています。天海祐希役所広司の奥さん役でいい役をやっていますな。
 この事件にかかわった坂東國男は滋賀県の出身で、お母さんがあさま山荘にいって息子を説得している様子がテレビで流れていました。お父さんは息子が逮捕される直前に「人質にされた方には心からお詫び致します。」という遺書を書いて自殺したというニュース速報のテロップがテレビで流れて、一緒にテレビを見ていた僕の父親が「うーん。」と唸ったのを覚えています。


 世の中に優秀な人はたくさんおられるわけですが、そういう人でも、その時の自分の置かれた立場、役職、状況によって、その人の発言や行動も変わってくるでしょうし、周りからの見え方もかわってしまうのでしょうね。そんなことを今考えています。




7日(火) 七夕
 七夕にしろ、お盆にしろ、月遅れにかぎる、という意見もありますが、ま、七夕です。ええ、ま、今夜の天の川は見えそうもありません。ま、雨雲で見えないだけで雨雲のさらに上では天の川はキラキラと流れており、牽牛織女の二星もキラキラと輝いているはずです。ちなみに牽牛織女はそれぞれ耕作および蚕織をつかさどる星で、それらにちなんだ種物(たなつもの)・機物(はたつもの)という語が「たなばた」の由来とする江戸期の文献もあるそうです。うーむ。


 午前中は本を読んだり、ウダウダしたり。
 午後は田んぼの見回りなど。畦畔ブロックが倒れてしまった田んぼがあるので、大雨で畦畔が崩れないか、いささかならず心配している。今日のところは大丈夫だったけれど。


 今年もグリーンカーテンの世話を奥さんがしていてくれる。朝顔とゴーヤと夕顔。
 さっそくゴーヤの花が咲きはじめたのですが、ゴーヤには雄花と雌花があるのです。この時期に咲くのはほとんど雄花です。えー、要するに雄しべしかない花ですね。で雌花には雌しべしかないわけです。でも一つ雌花も見つけました。見分け方は簡単で、花の中心のところが黄色いのが雄花。緑色になっているのが雌花です。で雌花はゴーヤになるので、花のすぐ裏側のところに小さなゴーヤになるブツブツのある膨らみがあります。でもこの降り続く雨で虫はほとんど飛んでいないので受精しないでしょうね。うーむ。


 九州の雨の映像のニュースをみると言葉もない。なんとか早く雨が止んでほしい。いや、このあたりも大雨の警報と雷と洪水の注意報が出ています。