現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

「尻踏み」と「こなし」と雨のアジサイとトラクタの故障と『伊丹万作エッセイ集』


3日(木)
 早起きして田回り。それから出芽機のヒーターの格納等。
 長男が「尻踏み」をするドライブハローで、「土引き」に切り替えが出来ないという。ドライブハローというのは、トラクタのアタッチメントの一つで、田んぼの表面の土を細かく砕いて、平らに均してくれる機械だが、均すにあたっては高いところの土を低いところへ引いていくという作業もあるわけです。なにも難しいことはなくて、ドライブハローの均平板をロックして、トラクタのパワーで強引に土を引いていく、という単純なものです。これがトラクタの運転席からリモコンで操作できるのだが、リモコンのボタンを押しても、ぴ!と音はするけれど、ドライブハローが反応しない。やれやれ。いつものように農機センターのKさんに電話すると、すぐ見に来てくれたが「切り替えのモーターが壊れたようなので交換する必要がありそうです」というご託宣が下る。まあ、長く使ってきているのでそれも仕方なかろう、とモーターを注文することにする。当面は土引きなしで「尻踏み」の代かきを長男にしてもらうことになる。
 というわけで、長男は「尻踏み」に出てくれて、僕はといえば、田植えが押してきているので、27馬力の小さめの古いトラクタで新田地区の小さな圃場の「こなし」作業に出る。荒起しをした田んぼに水を入れて一回目の代かきを「こなし」といいます。二回目の代かきは「尻踏み」ですね。三月か四月に荒起しをしてあるのだが、それから時間が経っているので、すでに草が生えてきているので、それを埋めるような代かきになります。
 パワーがないし、ロータリーの幅も狭いので効率が悪いけれど、大きいトラクタは長男が「尻踏み」しているので仕方がない。すこしでも先に進もう、という健気な心意気です。小さいトラクタはここしばらくあぜ塗りと大豆の中耕除草にしか使っていなかったので、なんともじれったい。しかも使って気がついたが、ほとんどオート調節機能が死んでいるなぁ(笑)。ロータリーの深さや水平もすべてマニュアルでレバーやツマミでおこなう必要がありました。なかなか神経を使うので疲れるが、ま、なんとなく懐かしい感触の操作。
 日没過ぎまで僕も長男も頑張ったが、風が強かったので、長男の「尻踏み」は大変だったろうと思われます。


 夕方から雨という予報だったので、麦刈りをしておられる農家は、なんとか今日中に、雨の降る前にしまいたい、ということで、大急ぎで刈取り作業をしておられました。ご近所の農家は概ね雨の前に終えられたようです。残されたところもほんのわずかの模様。



4日(金)
 朝から16時ぐらいまで雨。けっこう激しく降る時間帯もありました。
 長男は昨日の続きで「尻踏み」に。僕も昨日の続きで「こなし」に。長男が乗るトラクタはキャビンがついていて、屋根もあればガラスの窓もあるので、雨に濡れる心配はないが、僕が乗るトラクタはフルオープンなので、雨の日はカッパを着ての運転になります。カッパきてトラクタに乗るのは何年ぶりだろう。まあ、そんなことは、どうでもいい。就農した頃はこのトラクタしかなかったので、なんでもこのトラクタで、雨の日も出来る作業はこのトラクタでカッパ着てやったものでした。
 雨が水を張った田んぼの水面で跳ね返るほどのどしゃ降りの中へトラクタで飛び出したまではよかったが、すぐにカッパズボンに穴が開いていることに気がつく。やれやれ。30分もしたらパンツまで沁みて濡れてきた。
 と思っていたら、今度はトラクタの調子がおかしい。トラクタにはトラクタが傾いてもロータリーは水平に保つオート機能がついている。でもこのオート機能がどうもあやしいことは昨日の作業で気がついていたが、マニュアル操作で、ツマミを手動で動かすことによって、動かしてきたのだが、このツマミが効いてない。ツマミを動かしても、手動でも水平にならない。これではまともな代かきはできない。というか右側が下ったままで、左のタイヤの跡さえ消せてない。いやはや。やれやれ。これではどうしようもないが、一枚はなんとかやり終えて、田んぼから上がってきた。
 すぐにまた農機センターのKさんに電話する。すぐ来てくれたが・・・。「たぶん、これは水平のセンサーが壊れたんだと思います。で、今、電話して聞いてみたら、どうも古くて同じセンサーがもう生産されてなくて在庫もない、ということでした。あとはどこかに部品取りのできる同じセンサーを付けたトラクタがないか、どうか。あるいは、センサーを外して、ロータリーを水平に固定して上下動だけで使うか、でしょうか。」と昨日に続いてご託宣が下る。いやはや。
 仕方がないので、同じセンサーがないか探して欲しいこと、あるいは中古で程度のよい20馬力から25馬力ほどのトラクタがないか探して欲しいことをお願いする。ただ同じメーカーでないと、ワンタッチヒッチ(えーっとトラクタがアタッチメントを引っかける部分なんですが、ワンタッチで引っかけるための規格がメーカーやサイズによっていろいろあるので、ややこしいのです。)のことがあるので、トラクタが見つかってもヒッチの交換が必要になるかもしれません。などとさらにお告げが下ってくるのでありました。「おいおい、もう首は回らんぞ。」とは言ってはみたものの。確かにもう22年ほど使っているトラクタなので故障は仕方がないが、もうちょっと部品の在庫を持っていて欲しいなぁ。


 というわけで、長男は午後も「尻踏み」に出てくれたが、僕の方は出られなくなってしまった。
 仕方がないので、すこし事務仕事をして、ずっと気になっていた散髪に行く。長くなった髪をばっさばっさと刈り上げてもらう。頭が軽くなる。脳みその働きも軽くなるといいのだが・・・。「毎年のことですが、日焼けで顔が真っ黒ですね。おでこと首は白いですけど。おでこは帽子ですね。首はタオルですか?」と言われるが、図星である。モルジブ焼けです。ニースで焼けました。あるいは、ヒマラヤのトレッキングに行ってたの。などと言ってみたいものだ(笑)。


 散髪屋さんから帰るときにコンビニによってビールを買う。
 飲む前にすこし事務仕事をして、プシュッとしてしまった。
 ネットで古本屋さんに欲しい絶版の本などを上げておくと、日本中の古本屋さんのネットワークで探してくれたり、入ったりすると教えてくれる、というサービスがあって、伊丹万作著 大江健三郎編『伊丹万作エッセイ集』(ちくま学芸文庫)を探して、と注文を入れておいたら、一カ月ほど前にありましたぜ、と送ってきた。ありがたい。ずっと積んでおいたのだが、最初の二編をチラッと読んだら、これが、あーた、オモシロイ。皮肉が利いている。坂口安吾のエッセイの文体に近いところがあるかも。この田植えも後半に入ってバタバタの時期にどれくらい読めるかは自信がないが、これは楽しみです。って、まだ二編読んだだけだけど。


 伊丹万作の顔も表紙の写真で初めて見たけれど、なるほどこういう顔の人だったのか。髪も黒々しているけれど何歳頃の写真かなぁ。いや、なに、今日は散髪屋さんで「うーん、ずいぶん鬢のあたりが白くなってるけど、ばっさり切っといて。」「白いのだけ切ることはできませんが、年齢とともにこれはしかたありませんね。あれ?還暦っていうてはりましたね。」「ほうなんよ。どうも仕方がないね。白くなるか、なくなるか。」というような会話をしてきたばかりなので(笑)。