ピーター・ファレリー監督『グリーンブック』(2018)を観る。いい映画でした。なんだか久しぶりにとってもいい映画でした。1962年のアメリカが舞台。ま、ストーリー的には僕が思っていたような展開だったし、黒人差別をテーマにした映画としては、ちとステレオタイプな展開だと思うけれども、実話を元にした映画ということで、あまり突飛なこともできなかったんでしょうけれど、でも、いろんな細かなシーンがいいですね。ほんと次々といいシーンが出てきます。要するに真正面から黒人差別に向き合った社会派の映画というよりは、イタリア系の白人と黒人の二人の男の友情にも寄せた映画といってもいいんだろうな。ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの演技が光るところ。
あとヴィゴ・モーテンセンの奥さん役リンダ・カーデリーニがスバラシイです。映画の中でヴィゴ・モーテンセンが妻に手紙を書くんですね。ニューヨークから8週間のアメリカ南部を回るツアーの運転手を務めるわけで、電話は長距離になって高くつくから手紙を書いて、と云われるわけです。で、正直にちゃんと手紙を書くんですね。ま、詳しくは書かないけれど、手紙をもらってよろこぶリンダ・カーデリーニの演技というか表情がいいです。美しいんだなぁ。
白人と黒人のコンビの映画というと『最強の二人』という、これまたすごく良かった映画があったけれど、僕は『ミッドナイト・ラン』を思い出しました。『ミッドナイト・ラン』は白人二人の映画だけれど。やはり友情に寄った(酔った)僕の印象かもしれません。
映画を観た人もたぶんあまり誰も書かないだろうからちょっとだけ最高にいいシーンを一つだけ。「昨夜は悪かった。」「気にすんな。俺はNYのクラブで働いていたから知ってる。この世は複雑だ。」と言って階段をおりていくヴィゴ・モーテンセンに、マハーシャラ・アリがちょっとだけ手を振るんですな。彼が見えなくなってから。これだけでは何のことかわからないだろうけど。とてもいいシーンです。ほんとはこれの前のやり取りもすごくいいんだけれど、そこは書かずにおきます。この世は複雑だから、シンプルに生きていこうとすると、いよいよ世の中の複雑さに直面したりするんですな。あ、また思い出した。「先に書くんだよ。寂しいときは自分から先に手を打たなきゃ。」
いや、いい映画でしたわ。