現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

バタ貝(緋扇貝・ヒオウギ貝)をいただいたことと「正直貧乏」

山の幸、海の幸って言いますが、内陸県の滋賀で暮らしていると、海のそばで暮らす人がとてもうらやましく思うときがありますね、本当に。焼けてパカッと開いて、おツユがジュージューと出ている貝のうまさよ。たまらん。ビールがどんどん飲める。
 朝起きて外を窓から眺めると3cmか4cmの新雪で、もう今回の寒波のピークは過ぎたことがよくわかります。
 午前中は精米など。
 午後はすこしだけ屋根から落ちた雪をスノーダンプで処理する。あとはなにしていたのかよくわからない(笑)。

 漁師さんから直接仕入れたバタ貝(緋扇貝・ヒオウギ貝)をいただきました。帆立貝みたいな形なんですが、貝はすこし小ぶりで、色が美しいのですが、焼き立てのジュージューをいただくとメチャクチャうまいのです(笑)。緑色のヒノキの葉っぱや濡れた新聞紙にくるまれて送られてきたのですが、まさに採れたての生きてるやつをすぐにいただくという感じです。

 先日いただいた長野のリンゴもそうでしたが、誰かに何かを贈り物をするときに、スーパーやデパートやお店を通さずに、その産地の農家や漁師さんから直接送ってもらう、届けてもらうというのが、確実に増えている気がします。贈る方からすると、現物をお店で直接見ていないので、どういうものが送られたのかわからなくて不安というところはあると思いますが、そのリンゴ農家や(また米農家でも)漁師さんでも、その人をよく知っていたり、一度、二度とその人の農産物、海産物を買って食べて信頼がおけるのなら、百姓や漁師が直接自分の収穫・漁獲した産物をすぐに送ってもらったほうが、少なくとも二、三日は新鮮のような気がするし、おいしいのは間違いないんじゃないかと思ったりしています。安心ですしね。注文を受けた農家や漁師さんも、下手なものは送れない、と張り切りますしね(笑)。

 新米のシーズンになって、ご近所から親戚や子どもたちに送るから、玄米で、あるいは精米して持ってきて、とご注文をうけたり、あるいは名前と住所をいただいて、ここに新米を送ったって、とご注文をいただいたり。
 そういう販売を増やしているのがネット販売であることは間違いないでしょう。年末のこの季節には「お歳暮」の紙熨斗をつけて送らせていただいたところがいくつかありました。辻井農園のお米を信用して定期購入してくださるのはもちろんですが、お歳暮用に使っていただけるのも本当にありがたいことだと思いました。
 もっともネット販売にもいろいろあって、例えばお米でいえば、うちのように農家が直接ショップを開いて受注販売送付しているところもあれば、お米屋さんのネットショップもあります。農家の直接のショップは、ブラウザで見えるデザインなどはモッチャリしているところもありますが、モノが新鮮なのは間違いないと思います。でも個人農家ですから品質のバラツキはどうしても出てくるでしょう。お米屋さんはある程度品質の整ったものを選んで買って販売しておられるでしょうし。でもそれでも味や品質、対応が信頼できれば、農家から直接買ったほうが新鮮だし、安心だし、おいしいし、たぶん価格的にもいいのではないかと思います。ただ個人販売ですから売り切れてしまったりして、買いたいときに買えないときもあったりするのですが。
 商売は信用と信頼、という言葉をいつ教えてもらったかははっきりしないのですが、百姓になってネット販売をするようになってからなのは間違いないです。でも考えてみたら信用と信頼は商売に限らず、あらゆるところで大切なことで、信用と信頼なくして大人社会のなりたちはないわけです。恋愛から結婚にいたる過程も、結局、信用と信頼ということになるのではないかと思います。まして有機栽培のお米を、おいしいですよ、安心ですよ、と吹聴してネット上で商売するのは、いささか厚顔、傲慢、不遜のそしりを受けるのではないかと思ったりしていますが、ま、言うことは言って宣伝して、あとはぼちぼちと正直にやるしかない、と覚悟しているところです。

 昔、成人の日にサントリーの大きな新聞広告があった時、山口瞳の「正直貧乏」という広告が載りました。今、調べたら昭和58年の成人の日のサントリーの新聞広告だそうです。


   「正直貧乏」      山口瞳

   どんなに勉強しても試験の成績が悪いことがある。
   正直に真面目に働いても貧乏している人がいる。
   「正直貧乏、横着栄耀(おうちゃくえいよう)」という言葉があるそうだ。
   しかし、僕は、この人生、血も涙もないとばかりは思っていない。
   正直にマジメにやっていれば何か良いことがあると信じている。
   第一、そうするよりほかに手立てがないじゃないか。
   そうするよりほかに美味い酒を飲む方法がないじゃないか。
   結果が悪くてもクヨクヨするな!
   成人式を迎えた諸君に「正直貧乏」という言葉を僕は贈る。

   成人おめでとう
   サントリーオールド


 ええ、本当なら来年の一月の成人の日のブログに書けばいいのかもしれませんが、実は、もう何度かこのブログで書いているので、成人の日のネタとしては、もうどうでもいいのです。でもこの文章と「正直貧乏」という言葉は、成人の日を意識するたびに思い出していました。

 送っていただいたのにリンゴ農家さんもバタ貝の漁師さんも名前が書いてなかったので、どこのどなたなのかはわからないのですが、リンゴとバタ貝と食べてみれば、その正直さと真面目さはよくわかります。貧乏かどうかはわかりません。「なるほどな。」と知らない人物を静かに尊敬しているところです。
 辻井農園も信用と信頼を得るべく頑張ります。
と、世間的には仕事納めの今日、反省と抱負の一端を記します。