現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

雪の大晦日と「手取川山廃大吟醸」と『きっと、うまくいく』


 朝起きたらまだ暗かったのだが、窓の外を見ると5、6cmの積雪。寒波でずいぶん冷え込んでいる。

 朝、ラジオで食料自給率より食料自給力を考えないといけない、とどこかの研究員さんがおっしゃっている。日本の農業資源はどんどん減ってきていて、農産物の輸入が止まった時に食料を自給できる農地がどんどん減ってきているし、生産調整で米など穀物の食糧生産の能力もずいぶん下がってきてしまっている、農業機械を動かす燃料も輸入だし、肥料も原料をほとんど輸入している、と警鐘を鳴らしておられる。じゃ、その「農産物の輸入が止まった時」というのは、どういう時?と考えないといけませんね。戦争?大災害?異常気象?そんなことが起きるわけがないぜ、あはははは。と笑っていられるでしょうか?
 昨日、「肥料原料が入手困難 中国が国内供給を優先 全農、メーカーは切り替え急ぐ」要するに日本の化学肥料の原料は中国から輸入してきたのだが、中国の農業も肥料をたくさん使うようになって、原料を国内用にたくさん回すようにしたので、輸入が困難になってきたので、JAは中国以外の国から輸入するように切り替えようとしていきます」という中日新聞の記事を紹介したけれど、そういえば先日も日本経済新聞の記事に「世界の穀物、中国が買いだめ 過半の在庫手中に」というのを紹介しましたね。中国も人口が多いですから、すこし国民の暮らしがよくなってくると消費するものが競合してくるのは当然です。そうして自国で必要なものを輸出してしまうことは、普通はあり得ません。(ええ、自国で米が余ってきているから生産調整させているのに、さらに外国から米を輸入させられている国もあることはありますけどね、普通、これもないはずなんですけどね。)世の中は、日本を取り巻く世の中は、確実に不安定になりつつあるということです。

 奥さんから買い忘れたものがあるから買ってきてと言われて買い物に出る。お酢とかマリネに使うドレッシングとか牛乳とか。近所のスーパーにいったのだが、さすがに大晦日で込んでいました。ドレッシングのコーナーに行くとたくさんあってなにがどうなのかよくわからない。マリネに使うレモン果汁入りのドレッシングと言われても。そこで品出しをしていた店員さんに聞くと「マリネに使うドレッシング?」と0.5秒考えて隣のお酢のコーナーにあったマリネ用のお酢(レモン果汁入り)をとって、「たぶんこれだと思います」とおっしゃる。はい。大正解でした。

 大晦日なので新聞に今年亡くなられた有名人の名前とその紹介が載っていました。落語好きの私としては仁鶴さんや小三治さんの記事が気になりましたが、福井県立大学の先生だった田中求之さんの名前も探してみましたが、載っていませんでした。中部北陸の中日新聞としては載せてほしかった先生です。
 書き出すと長くなるので、簡単に書こうと思いますが、今こうして私がお米のネット販売ができているのは田中求之先生のおかげです。 初めて買ったパソコンは中古の初代の98Noteでした。ま、ここでパソコンのワープロで『松』、日本語入力のFEPとして『松茸』、それから表計算の『ロータス123』のマクロを組んで動かすことを覚えたんですね。で、素人の私がどこでそういうマクロなんてものを覚えたかというとパソコン通信ニフティサーブの「フォーラム」で情報を得ていたわけです。で、その後Macintosh IISiを買うんです。オマケというか付属のソフトがビル・アトキンソンが開発した『HyperCard(ハイパーカード)』というソフトだったんです。この『HyperCard』の情報を続いてニフティサーブの「フォーラム」で得るわけですが、そのフォーラムのシスオペ(システムオペレーター)をされていたのが、田中求之先生でした。『HyperCard』にはHyperTalkという言語がついていて、これで『HyperCard』はプログラミングができるようになっていたのです。さらにHyperCardに実装されていない機能を追加するXCMDやXFCN(外部コマンド、外部関数)と呼ばれるものがあったのですが、田中先生はこのXCMDやXFCN作者でもあったんですね。とくに日本語処理をするXCMDやXFCNを田中先生が作ってくださったので、HyperCardの魅力が2倍にも3倍にもなったのでした。私もHyperCardを当時の仕事で利用していました。そんな中でプログラミングの仕方や作法というようなものを学んだような気がしています。わりと自由に使えるようになってくると私も『Compilelt! 』でコンパイルしてスピードアップさせることを覚えはじめました。その頃『Compilelt! 』の使い方を質問を田中先生に二、三したことがありました。「なにもXCMDやXFCNがエライわけではありません。HyperCardを使っているんですから、スピードがエライわけでもない。大切なのはプログラミングのやり方、作法、組み上げ方というところをしっかり身に付けることだと思います。」というような一文がそのお返事の中にありました。それはプログラミングの基礎もまだ充分ではないのに、はやる気持ちをたしなめてくださったんだと思いますが、よく覚えています。すでにその頃には田中求之先生は要するにHyperCardのHyperTalkや外部コマンドを自作してインターネットサーバーを作っておられたんです。まあ、これがネット上で評判になっていました。たぶんあの当時インターネットの黎明期の日本で、一番インターネットサーバーの仕組みについては詳しかったと思います。サーバーに対する攻撃に対しても素早い対応をされていましたね。そういう報告があると日本の国だけでなく海外からも「どこの誰だか知らないけれど、一番攻撃してはいけないサーバーに攻撃をしかけて撃退されている(笑)」みたいなコメントが寄せられていました。
 話はずいぶんズレましたが、要するに私がコンピュータに興味をもって、プログラミングをしたりHTMLを勉強してHPやブログでもデザインの変更がすこし出来たりするのは田中求之先生のおかげです。直接会ったことはありませんが、パソコン通信やインターネット上で、そのお人柄に触れてずいぶんと啓蒙していただいたと思っています。経済学の先生でしたが、経済学の分野でどれくらい論文を書かれたのかはわかりません。「あなたのやっていることは、経済学の分野では評価されにくいだろう」というようなことを何人もの先生から言われている、と田中先生のブログ上で告白されていました。サーバーを作ることは、コミュニケーションツールを作ることであることは間違いないですが、それがなかなかコミュニケーション論みたいな形にはなりにくかったのかもしれません。コミュニケーションツールを作り上げることで、学内、学外も関係なく、たくさんの人とコミュニケートされたのは間違いし、私などはその影響を受けてネット通販をしているところです。コミュニケーションが経済と深く結びついていくのですが。ええ、とても感謝しております。

 ラージクマール・ヒラニ監督『きっと、うまくいく』(2013)を観る。観るのは二回目。三バカトリオの珍騒動の青春映画。コメディですね。二度目ですがストーリー的にはずいぶん忘れていて、その分新鮮に楽しめました(笑)。すばらしい映画でインドで史上空前の大ヒット興行との由。なるほどな。今回も何度も笑って泣きました。青春コメディ映画の王道ですな。
 青春映画と言えば恋愛が一番のテーマと思われがちですけれど、ええ、いや、確かに恋愛は人生の花ではありますが、でもたぶん恋愛以上に僕は友情をあげたいと思っています。友情というのは、まあ、一番照れ臭いモノなんですな。だいたい普通の男子は友情なんてことは口にしませんから(笑)。一瞬の輝きは恋愛に負けますが、それでもジワジワと長く人生を暖め続けてくれるのは友情です。顔なんてそんなに合わさなくてもいいんです、ある時期に濃密につきあっていれば。
 夏に亡くなった同級生の奥様に手紙を先日送ったらお礼のお手紙とお酒を送っていただく。手取川山廃大吟醸を冷でそのままグビリと飲んでそのうまさにうなりつつ、お手紙を再読、三読して、泣いてしまう。

 一年間、ありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします。