現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

畦塗りと桜一輪開花と『ひまわり』

 今日から四月。
 朝のうちは曇っていましたが、その後晴れてきました。でも風が冷たくで強い一日。
 朝から軽油を満タンにしてトラクタで畦塗りに出る。畦塗り機がついているのはフルオープンの小さいトラクタなので、今日のように風が冷たいといささかこたえる。マフラー代わりにタオルを首に巻いてヤッケのフードを被ってなんとかやりすごす。お昼前に長男と交代。
 その後は精米と発送。それからお茶とファイルを買いに出る。夕方、長男から軽油を持ってきてほしいと連絡が入って、すぐに軽油を持っていったが、寒くてかなわんので、今日はこれでおしまい、と宣うのでありました(笑)。ええ、ま、おっしゃってることはよくわかるので、なにも言うことはありません。明日、また朝から私が畦塗りします。

 お昼に近所のK百貨店の桜が一輪咲いてました。でも5輪から10輪ほど咲かないと開花宣言にはならないのだそうです。

 ヴィットリオ・デ・シーカ監督『ひまわり』(1970)を観る。イタリア映画かと思っていたらイタリア・フランス・ソビエト連邦アメリカ合衆国の合作映画なんですね。なるほど。いやー、よかったです。メロドラマですけど。マルチェロ・マストロヤンニソフィア・ローレン。セリフはね、ま、普通なんです。映画の前半で二人が出会って結婚して休暇の12日間は二人がわりと饒舌なんですが、その後は二人の表情がね。ええ、寡黙な表情がね、泣かせますね。名画ですなぁ。ロシアの外務省の役人の「ひまわりの下にはたくさんの兵士や農民が眠っている」というウクライナのヒマワリ畑で撮られた有名なセリフがありましたけど、僕はマストロヤンニの「戦争は残酷だ。」という暗闇なのかでつぶやかれるセリフが一番印象に残りました。
 第二次世界大戦は1945年に終わりますが、映画の公開は1970年。二人がロシアで、またミラノで再開するのは、いったい戦後何年後なのか、というのがはっきりしないのが、気になるなぁ。アントニオの子どもは5歳くらいか?戦後6、7年なのかもしれない。で、ミラノで会う時ジョバンナには赤ん坊がいるので、アントニオのことを知ってから2、3年は経っているのでしょうか。そのあたりのことがロシアやミラノの街並みの様子を観ても私にははっきりしないんですね。ま、そんなことは映画としては些細なことなんでしょうけれど。

 この映画はね、マルチェロ・マストロヤンニソフィア・ローレン。アントニオとジョバンナが結婚して夫婦だったから成立している映画だとも言えるのではないか。もしこの二人が結婚していない恋人同士だったら、また映画のムードは変わってしまうような気がしています。昔、ええ、大昔ですけれど、平野謙が戦後すぐの評論に、戦争未亡人はツライぜ、みたいなことを書いたら、坂口安吾が戦争で夫を亡くすのと、恋人を亡くすのと、そのツラさに違いがあるのか、と書いていたのを思い出します。当時独身で二十歳前後だった私は、そのツラさに違いはないだろう、と思ったけれども、確かにツラさに違いはないかもしれないけれど、その後の生き方はまったく違ったものになりますよね。未亡人と独身の恋人とは、たぶん。いや、独身になったんだから同じじゃないの、という意見もあるでしょうが。ええ、もちろんそれはそうなんですが、現実的にはやっぱり違うだろうな、とは思います。
 たぶんジョバンナ(ソフィア・ローレン)もアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)と結婚していなかったら、ロシアまで探しにはいかなかっただろうと思います。

 例えば。
 もし。
 若い頃、プラトニックな恋で終わった、あるいは片思いで終わった、恋人や好きだった人が、あーた、夢に出てきてしまったら、・・・。気になったり、会いたくなったり、一瞬はするんですけどね、もちろん、秘すれば花、逢わぬが花、という格言も知っているので、還暦としては分別はあるのですが(笑)。
 ええ、名作メロドラマを観てしまったので、頭の中まで春になってしまったか(笑)。