現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

『農家はもっと減っていい』と成人式とインディーな辻井農園と貧しくて無名な還暦(過ぎ)


↑外の洗い場の横の洗濯機の上にニンジンが三本。三本のうち左の二本はなにか伸びにくい理由があったんだろうなぁ。

8日(日)
 久松達央『農家はもっと減っていい』(光文社新書)読了。たぶん去年の秋に買ったんです。枕頭本にしたのですが最初の30ページほどで何度も撃沈した本。何度も最初から読むんですが30ページほどで寝落ちしてしまいました。昨日の朝、枕元から持ち出して机の前に座って、コーヒーを飲みながらまた最初から読みはじめたら、なんとか60ページほど、最初の「第1章 農家はもっと減っていい」を読む。全部読了してわかりましたけど、なんだかね、やっぱり最初の出だしの第1章は読みにくいし、久松達央氏が何が言いたいのか、もひとつわからないと思いました。農家はもっと減っていい、というか、減らざるを得ませんよ、淘汰の時代ですよ、中途半端じゃやっていき難いですよ、ということなんだろうと思うんだけど。私も昨年岐阜のものすごくでっかい農業法人のところを見せていただく研修にいったので、淘汰の時代はわかるつもりなんですが、どうも私にはわかりにくい文章だと思いました。ところが「第2章 淘汰の時代の小さくて強い農業」からあとは、しゅるしゅると読めて最後までよくわかる達意の文章です。昔、『小さくて強い農業をつくる』(晶文社)を読んだ時に感じた、同じようなことを考えている人(久松農園は野菜を栽培しておられるところですが)が蘇ってきて、370ページほどは一気に読めました。
 設備投資のこと、ニッチ戦略、ファンをつくること、有機農業のこと、一緒に仕事をする仲間のこと、文化的な素養・教養のこと、などなどいろいろ付箋をつけたくなることがたくさんありました。ま、でも結局、いいもの、おいしいものが作れるように、自分のやりたいことをやれるように、努力もし勉強もし教養を高め仲間を集め、健康に気をつけて頑張る、ということなんだけど・・・。

 そういえば。読んでいる途中で、一度、辞書を引きました。二十年来(いや、もっとか?)、何度も耳にしてきたけれど、意味はなんとなくわかるような、わからないような、というあいまいなまま過ごしてきた言葉。

 【インディーズ  indies】〔インディペンデントから生じた語〕 映画や CD 製作などで,大手の製作会社に所属しないで,独自に製作・販売を行うプロダクションや会社。また,それにかかわる作家・音楽家

 なるほど。そういうことだったのね。インディペンデント(independent)からきていたのか。なんで今まで辞書を引こうとしなかったのか、我ながら不思議。そんなことも知らなかったの!?とお思いでしょうが、はっきりとは知らなかったのです。ええ、何度も耳にした言葉ですが、いままで私の口から発したことは一度もない言葉でした。ええ、これからは日常的に使うかもしれませんぜ。なんといっても辻井農園はインディーなので(笑)。 「独立の」「無所属の」 「業界を支配している大資本に対し、独立した小資本の会社(自営業)」なので(笑)。なんだか燃えてきたぜ(笑)。

 などと書きながらいろいろ思うところがあるんですけどね。あたしゃ、若い時から「大器晩成」という言葉が好きで、というか、正直に申し上げると、祈るような心持ちで「大器は晩成す」を頭の片隅に置いていたこともあったんだけど、もう還暦も過ぎてしまった私が今考えていることは、大器だろうが小器だろうが(男のイチモツのことにあらず)、早成だろうが晩成だろうが、早熟だろうが晩熟だろうが、まったく関係ないし、さらに言うなら、・・・(400字ほど抹消)。

 この寒空に珍しく爆音を響かせたバイクが二、三度、家の裏の道路を爆走する音が聞こえた。台所で煮物を作っていた奥さんに「なんか、珍しいな。」と言うと振り返りもせずに「成人式やで燃えてる子が出張してきてやんすんと違うか。」ということでした。さっきビールを買いに出たら、文化ホールの前に成人式を終えた新成人らしき若者がたくさん集まっておしゃべりをしたり写真を撮りあったりしていた。振り袖姿というか着物の女性の新成人は半分ぐらいかな?残りはスーツにコートでした。男性はほとんどがスーツでしたが、10人ぐらいは志村けんのバカ殿と同じかそれ以上の金ピカの姿でした。いやさすがに白塗りにちょんまげ姿はいなくて金ピカの短めの頭髪で、なかなか粋な姿でした。世の中が大人だと正式に認めてくれる式ですからね、女性のことはよくわかりませんが、オスの血が騒ぐのは当たり前です。
 日本には「判官贔屓(はんがんびいき)」という言葉もありますし、経験不足の若者が何かしたいことをやろうとして頑張った結果失敗したとしても、その時は叱られるでしょうが、それを許し応援してくれる大人もたくさんいると思います。失敗を恐れず頑張っていただきたい。自分の頭で考えてやってみたいと思うことがあるのなら、存分にやっていただきたい。失敗してもいいです。若いからやり直せるし、失敗はいい経験になることが多いです。頑張ってください。キモは自分の頭で考えることです。自主・独立、インディペンデント、インディーですぜ。

 毎年、成人の日はやってきますな。コロナ禍で成人式が行われない年もあったのは、まさに「禍」でしたが、私なんぞは学生の時で住所を移していたので、幼なじみと顔を合わせるわけでもないし、「成人式なんて、てやんでぇ!」と思って出席せずに、下宿の部屋でごろごろしてたら、隣に住んでいた下宿の大家さんが「ツジイさぁーん!」と大きな声で呼んでくれて、「なんですかぁー?」と返事してお隣に行くと、「成人、おめでとう!これ、さっき自治会長さんが渡してくれ、って持ってこられたが。」と “祝成人”と書かれた熨斗紙つきの小さな箱をいただく。部屋に帰って開けてみたら大きいけど薄手のコーヒーカップでした。なんでかしらんけど、それ見て泣けたなぁ(笑)。学生だし自治会には無縁だし自治会長さんも知らないんだけど、自治会長さんも私のことは知らないと思うのだが、新成人のリストを見たんでしょうなぁ。新成人に対する無差別の祝意、期待。それが形式的なものであることはもちろん理解していましたが、無差別であるがゆえに、一人、下宿の部屋でごろごろしていた私の心に染みたのでした。
 学生だった当時も当然無名なら、還暦になった今でもあいかわらず無名だけれども、真面目に仕事をしてきているつもりなので、いささかではありますが世の中や社会には貢献もできたはずだし、まだもうしばらく真面目に仕事するつもりです。

     貧しくて無名な若者に万歳!貧しくて無名な還暦(過ぎ)に万歳!

 かくして「貧しくて無名な還暦ははしゃぎやすい」という格言が『プチ・ラルース』には載っているという噂に信憑性がでることになる(笑)。