現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

菜の花のすき込みと『茶の花おぼえがき』と熊本地震と温湯消毒



16日(土)
午前中は昨日の続きで菜の花を肥料にすべく土にすき込みました。いちおうすき込む予定の田んぼは、今日ですべて終了。
天気の都合など、仕事の段取りの都合で、菜の花はずいぶん種をつけていますが、まだ青い種です。種はのちのち菜種油ともなる種ですし、油を搾った絞りカスは、油粕となって、よい有機肥料になってきたわけですから(僕の祖母が畑仕事をゆっくりしつつ、油粕を施肥して、「油粕をやると、おいしくなるんや。」と言っていたのを、当時小学生だった僕は、はっきり覚えてるんだなぁ。)、無農薬有機栽培でお米を作ろうと思ったときに、菜の花をすき込んで緑肥にする栽培方法に、あ!これや!と思ったんですね。
農協が化学肥料を基本にして米づくりの施肥量を計算して出してくれています。うちの菜の花の田んぼでは、これは僕の計算ですが、農協の出している窒素肥料分の半分くらいしか稲に効いていないと思います。ですから当然、お米の収量はぐっと下がってしまいます。雑草が生えて、雑草も窒素分を吸収してしまいますからね。
僕の大好きな詩人に吉野弘という人がいて、この人の詩のいくつかは、僕の骨身に染みていると思っている。朔太郎や高村光太郎金子光晴も、たぶん骨身に染みているはず(笑)。
で、こんなことは、教えたくないのだが(笑)、辻井農園が標榜している「安全安心おいしいお米」の基本は吉野弘の『茶の花おぼえがき』という詩にあるのです。ずいぶん前のブログに記事にしたことがあるので、お時間があるのならお読みください。


要するに、植物は自分の周りに栄養分が少なくて、これは子孫が残せないかもしれない、と焦ったときには、必死になって子孫を残そうとするわけです。稲の場合、子孫とは稲穂です。種です。お米です。周りに栄養分が少ないわけですから、必死になって働いて栄養分を集めて種につぎ込もうとするわけです。元気なよい種にして子孫繁栄を考えるわけですね。植物にとって必要な栄養分というのは、よく言われる窒素リン酸カリだけではないはずで、自然界には当然ある微量要素が必要なわけですが、たぶん化学肥料だけを与えて除草剤で雑草を生やさない栽培方法をとっていると、そういうものがだんだん不足してくるんだと思います。じゃあ、そういうものをどう補充するのか、自然界の成り行きにまかせる、というのが、一番であるような気がするんですよね。異論は当然あるでしょうが。
土にある肥料分が少ないわけですから、当然、種の数は少なくなります(収量がおちるわけです)が、一粒の種に栄養分をしっかり集めようとするわけですから、種にとっての栄養分や旨味がつまることになるわけですね。植物は自分の周りに栄養分がふんだんにあると、いつまでもこういう状態が続くのか、と錯覚するわけです。だから子孫を残すことにボケるわけです。すると種に栄養や旨味を集めることをさぼろうとするわけです。僕が今思い描いているのはそんなイメージです。
もちろん、収量が半分になれば、値段を倍にしなくては利益がでません。もっとも、百姓の手間は倍以上かかりますから、単純に値段を倍にしてもダメなのですが、農薬代、肥料代はかかりません。
そういう植物のしくみをイメージするようになったのが、吉野弘の『茶の花おぼえがき』でした。もっともこの詩は農業を始める前から読んで知っていて、好きな詩だったのですが、他の植物関係の本を読んでいるときだったか、父と話をしているときだったか、ふいにこの詩のことを思い出して、花や葉っぱや根や種や、そういうものが全体としてイメージできるようになったんです。



今日は終日、トラクタに乗っていたので、ずっとNHKのラジオで熊本地震のニュース番組を聞いていた。ずーっと余震が続いていますね。たぶんテレビの音声がラジオで流れていたんだろうと思うのだけれど、アナウンサーが中継しているときに余震がきて、まわりの避難所だなのかな、住民の人たちから「ワー!」とか「キャー!」とかあちこちで不安な生の声が聞こえてくると、なんだか泣けてきてしまう。
現在日本で唯一稼働している原子力発電所は鹿児島の川内原発ですが、僕がトラクタでラジオを聞いているうちに三度、原発に異常はなく、稼働されています。原子力規制庁は原子炉の状態や、モニタリングポストの数値に異常はないと発表しています。というアナウンスがあった。まあ、それは今のところ異常はないんだろうけれど、これだけ余震が続いているんだから、電気も余っているし、止めたほうがいいんではないか。だいたい新幹線も高速道路も止っていて、何かあれば逃げるに逃げられない状態、非難できない状態になっているんだし。そう考えるのが普通な感じがするんだけれど。そんなアナウンスをすることで、原発の安全性を誇示するつもりなのかもしれないが、たくさんの人が不安におもっているのに、こういう状態の時に、不安を解消させずに運転し続ける電力会社がコワイ。原子力規制庁や政府が「今のところ異常はないけど、余震が続いているし、とりあえず止めたらどう?」と言わないのも不安。


17日(日)
10時ごろまで雨。その後晴れてくる。午後は晴れたが、朝から終日強風!朝の犬の散歩では傘の骨が曲がってしまった。やれやれ。
今日も熊本では断続的に余震が続いている。


種籾の温湯消毒をする。「秋の詩」と「みどり豊」。五月の中旬に田植えする分の種籾だ。その後、種籾は浸種。
夕方、ちょっと風がおさまってきたかな、と思いつつ麦の様子を見てまわる。途中薮の中でタラの芽を見つけて、採種。