現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

そも若き日に / 君、何をかなせし?」

今日は朝からしょぼしょぼと雨。しかも寒い。
大豆の乾燥のために農機の車庫からトラクタやら田植え機やらテーラーやらを作業所の中に入れておいたのだが、大豆の乾燥も終わったので、トラクタとテーラーを車庫に戻す。これからしばらくは目視による大豆の選別をしばらくやります。色の良くないのをはじくわけです。

それから畦塗り機を発注する。

藤沢周平全集第九巻』を読了して、さて早速十巻をと思ったら月曜火曜と図書館は閉館なのでありました。あら、枕頭本がないではないかと思って、本棚を探すと新潮文庫の『洋酒天国』が並んでいました。1〜3まで。持ってる文庫は昭和62年8月の発行で帯に「今月の新刊」とありますが(単行本は昭和58年11月に出ているようです)、昭和62年といえば1987年。うーむ20年本棚の肥やしをしていてくれたことになりますね。『洋酒天国』は昭和31年創刊、現サントリーの前身「洋酒の寿屋」のPR誌。「夜の岩波文庫」とも呼ばれ20年前にもすでに幻の、噂の、名PR誌だったのですが。さて『洋酒天国1』は「酒と女と青春の巻」ごそごそと蒲団の中に潜り込んで読み始めました。そしたらいきなり巻頭に開高健のこんな文章が、


当時なけなしのポケットをはたいてこの小冊子を読みふけったヤングたちは、いまやオッサン、オバハンとなり、後頭部に落日の直射をうけて墓場に向かう象の歩みを歩みつつあるかと思われる。そこで昔日を二冊本に濃縮してお色直しをし、ヤングの突き上げをかわしつつ血管にたまゆらの明るい灯をともして、橋の下を流れたたくさんの水を眺めたいと思う。心あるヤングは肩を並べて頁を繰り、変われば変わるほどいよいよ同じと、呟くなるべし。ヴェルレェヌの一句を進呈して。
    そも若き日に
    君、何をかなせし?
   一九八三年・十一月・52歳   開高健


一読、いかにも開高らしい文体で心に染みます。さて1983年当時ヤングだった私も25年が過ぎ、いまやまぎれもないオッサンとなったわけですが、ヴェルレェヌの一句が胸を刺しますな。こういう一句を突きつけられて、茫然と遠くを見つめる眼をしてしまうオッサンやオバハンも多いのではないかとご推察申し上げます。「若き日に旅をせずば、老いての日に何を語る」これもヴェルレエヌだったか、ゲーテだったか、こういう箴言がありましたな。四十も後半になり、夜中にふいと目が覚めて手に取った文章から「そも若き日に / 君、何をかなせし?」などとささやかれると妙に心落ち着かぬものではあります。心はひとときヤング時代をさまようのでありました。