現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

啓蟄の雨

tsujii_hiroaki2012-03-05

啓蟄
雨。家でパソコンに向かってポツポツと仕事。
ガソリンエンジンの田植え機はもちろんだが、混合油で動くツーサイクルエンジンの刈払機や動力散布機でも自分で混合油を作るので、ガソリンを買ってくる必要がある。ガソリンを買ってくる時、ポリタンクでは売ってくれない。専用の鉄製の缶が必要なのだ。冬にガソリンエンジンの自走式草刈り機を注文したし、今の10L入る缶がなんだかとても使いにくいので、20Lのサイズのやつを購入。今まで畦畔でも除草剤を使わず刈払機をギュンギュン回して草刈りをしてきたのだが、自走式草刈り機で体力的に少し楽になるとありがたい。


今朝の日本農業新聞にジャーナリストの東谷暁氏が文章を寄せていた。決してわかりやすいよい文章とは思わないけれども、最近の一般紙は政府がTPP交渉の情報を公開していない、というばかりで参加へ前のめりな姿勢はあまり変わっていないですね。交渉がどうなっているかはよく判りませんが、TPPに参加するようなことになると、農家が厳しくなるのはもちろんですが、TPPは農業のことだけではありませんし、いろんなところで格差が広がる嫌な社会になる気がしています。以下、東谷暁氏の文章の要約。

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昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)における日本政府の多くの失態が報道されて以降、環太平洋連携協定(TTP)に対する甘い期待は粉砕されたはずだった。ところが、最近のTTP報道はますます幻想に満ちたものになっている。
例えば、ある経済紙は「TTPの誤解 薄らぐ」との見出しを立て、「TTPオバケ」の真偽が徐々に判明しているなどと報じている。同紙によれば「公的医療制度」について米国は廃止を望んでいないと明言したし、「関税撤廃」には例外の余地があることもわかったというのである。
まず、公的医療制度だが、どこに交渉以前に「お前のところの公的制度廃止させる」などというバカがいるというのか。
米通商代表部(USTR)の公式文書には、「政府の健康保険制度の運用において透明性と手続きの公平性」を「求める」とあり、米豪自由貿易協定(FTA)や米韓FTAでは、公的医療制度が改変を余儀なくされた。
また、関税撤廃についても、関税が全てゼロになるからTPPがすばらしいと喧伝してきたのは、この新聞のようにTPPを賞賛してきた者たちではなかったのか。
日本に蔓延する最大の幻想は、米国は自由貿易の国であり、TPPも自由貿易を推進するものだから日本も利益を獲得できるとの思い込みで、これがTPPに対する幻想を生み出す源泉となっている。
農産物についてみれば、米国は自由貿易の国ではない。ガット(関税貿易一般協定)が始まって以来、最大の争点になったのは、米国が自国の農産物について例外を確保しようとしたことであり、戦後の国際貿易の歴史は、米国が例外を主張して他の国のそれを緩和させようとするくり返しなのである。TPPでも米国は砂糖、酪農、綿花は絶対に例外にしようとすだろうし、牛肉や鶏肉でも妥協しないだろう。
そもそも、自由貿易が無条件に良いものだという学説は、すでに昔日ものとなっている。貿易において「規模の経済」が働き、情報の非対称が存在すれば、「ウィン・ウィン(互いに得)の関係」は成り立たない。いまのように為替政策や通貨政策が強力に行われれば、貿易の条件は大きく変わってしまう。
さらに、農産物の自由貿易などほとんど絶望的と言ってよい。というのも、農業においては、最大の生産要素である農地を、即座に拡大縮小することは不可能だからだ。だから、どこの国も農業には神経をとがらせ、米国をその代表として巨額の補助金を支出するのである。
しかも、既にTPP反対派が指摘してきたようにオバマ大統領やUSTR高官の国内向け発言に「TPPによる自由貿易の推進」などという言葉は見当たらない。彼らには、米国の景気回復と雇用の拡大だけが問題なのだ。
議論というものは、最初の前提が間違っていれば、正しい結論には到達できない。TPP推進派の報道機関も論者たちも、この出発点において既に失格している。