現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

畔波シートをはずし『プラダを着た悪魔』を観る

プラダを着た悪魔

朝は曇り。お昼前から雨の予報でしたが、九時半には雨がぽつぽつと降りだしました。夕方には雨はやみました。
雨の降る前に朝、畦畔に入れたままになっていた畔波シートを抜きました。抜き終わったところで雨。もう少しやりたいこともあったが、仕方がない。


プラダを着た悪魔』を観る。うーむ。なるほど。この映画を観るのは二回目だと思うが、楽しめました。メリル・ストリープが圧倒的ですな。


夜は寄り合い。
寄り合いが終わって外へ出たら、濃い霧がでていてびっくり。空には半月。月齢は8.7ですからちょっと膨らんでいますね。なかなかロマンチックな春の夜霧でした。


さて。


     春の夜の驚く夢はあともなし閨(ねや)もる月に梅が香ぞする   光厳院 (『新千載和歌集』巻第一春歌上)


丸谷才一の解説によれば、


春月に梅の香をあしらうのは、ひとつの確立された型であるし、春の夜の夢に花の香を配するのもひとつの型である。「驚く」とうのは、1. はっと目を覚ます。 2. にわかに気がつく。 3. 意外なことにびっくりする。という意味だが、この第二句の「驚く夢」はこの三つの意味を併せ持って「夢を見てその夢に驚く」という内容を凝縮した。
光厳院はこの修辞によって、上の句のダイナミックな趣を巧みに差出し、それとの対比によって、下の句の静寂を深めたのである。


というようなことを書いたあとに、さらに。


「なほ春の夜の夢は、


     枕だに知らねば言はじ見しままに君語るなよ春の夜の夢   和泉式部


を連想させて、エロチックな情景を換気する。光厳院の詠は閨房のことに疲れてまどろんだ男が夢に驚いて目覚めたのかもしれない。その時梅が香と錯覚したものは、実は傍らの女人の肌の匂ひであつたと考へてもよからう。」


などと、最後に書いている。なるほど。
でも和泉式部の歌もわかりにくい歌ですね。この歌には本歌があって、伊勢の詠んだ歌。


     夢とても人にかたるなしるといへば手枕ならぬ枕だにせず   伊勢


昔、枕は恋の秘密を知ると言われていたそうです。枕は恋の秘密を知るといいますから、夢の中でも二人の仲を語ってはいけませんよ。こうしてあなたと共に寝ても、手枕さえいたしませんわ。というわけです。


先の和泉式部の歌。男女がひょんなきっかけで、ふとしたはずみで一夜を共にしたのでしょうか。ですから枕もせずに枕も準備せずに寝たのですな。枕さえ知らないのですから、私は誰にも言いません。あなたも見たままを人に語ってはいけませんよ。私たちの春の夜の夢を。春の夜の夢は情事のことですな。


うーむ。丸谷才一は、そんなこんなで和泉式部や伊勢の歌を踏まえて光厳院の歌を読んではどうか、といっているのですが、なるほどね。「下の句の静寂を深めたのである」という解説が僕は好き。閨房の春の夜の夢にハッと覚めた深夜の静寂かぁ。傍らには梅の香りをさせる女人がすやすやと寝ているのでありました。
春の夜の夢。いいねぇ(笑)。