現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

「尻踏み」の日々を気がつけばカエルの大合唱


30日(木)
晴れ。朝、プール苗代の不織布をはずす。苗も1.5葉ほどになっているから、はずしてみる。苗代2本のうち、一本は完璧に生揃ってすばらしい出来。もう一本はところどころ生えていないところがある。やれやれ。この違いはどこにあるのか。考えてみなくてはなりません。おおむね、察しはついているのですが・・・。
あと日没まで尻踏み。


1日(金)
晴れ。日没まで尻踏み。


2日(土)
不織布をはずしたプール苗代でありましたが、なんとスズメが苗代の苗をつついて引っこ抜いたりするという悪さをするようになって、あわててまた不織布をかける。スズメ対策に糸を張っておいたのだが・・・。やれやれ。スズメにはかないません。

今日も晴れる。午後遅くまで尻踏み。
夕方、田植え機の点検をして、夜はスポ少の審判講習会。


というわけで毎日次々と尻踏み。このあたりでは「尻踏み」と言っていますが、小学館の『日本国語大辞典』にも載っていませんでした。田植えをする前の代かきのことです。春、最初に「荒起し」をします。もう誰も鋤なんて使っていませんが(たまにサブソイラーをかける人もいるようですけど)、「荒起し」のことを、このあたりでは今でも「鋤く」と言います。そのあと代かきは2回するんです。代かきは起した田んぼに水を入れて土を細かく砕いて泥にする作業です。一回目はとりあえず水と土をかき回して泥にする作業。これをこのあたりでは「こなし」と言います。はい、土をこなすんですね。2回目は泥にした田んぼの土をできるだけ水平に均していくわけです。水稲の栽培はまず田んぼが均平である、というのが前提ですからね。
田んぼを均平にする作業、今はトラクタにドライブハローをつけてやるわけですけど、昔は馬鍬という道具でやっていました。馬にも引かせたのでしょうけれど、最後はグランドをトンボでならすように、やはり人が手で均すわけです。しかし人間には足がありますから、田んぼに足跡が付くわけですね。ドロドロになった田んぼの土だと足跡もすぐ自然と埋まって消えてしまうわけですが、気になりますから、最後はやはり自分の足跡を消しながらバックしながら田んぼから上がるわけです。この自分のお尻を踏むようにバックしながらする作業なので「尻踏み」と言うのではないかと思っています。几帳面なというか少しでもきれいにたくさんお米を獲ろうと頑張っている日本の百姓の心持ちが感じられますね。


そんなこんなで、日没まで尻踏みをして、トラクタを田んぼからあげて、エンジンを止め、水路に入って、長靴の泥を落したりして、ふと、気がつくと、カエルの大合唱。一日の仕事の充足感が湧いてきました。