現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

遠藤展子『藤沢周平 父の周辺』


大寒である。
午後、少し普及所のSさんとKさんが寄ってくださって話をする。
先日、チェーン除草のことやらで、少し質問というか、わからないことがあったのだが、いくつかヒントをいただく。さらにブラシローラーのことなど、あれこれ除草談義。
Kさんは、うちの無農薬の「コシヒカリ」を日曜日に買ってくださったのが、さっそく炊いてみてくださったようで、とってもおいしくて、いつもはあまり玄米だと食べない子供たちなんですが、そんな子供たちも全部食べてくれたんです、と報告していただく。嬉しいです。


人間臨終図巻は第三巻に突入したが・・・。長いので(笑)、ここらで小休止。遠藤展子『藤沢周平 父の周辺』(文春文庫)を読みはじめる。なんだか文章が初々しい。心にしみるいい話が多い。


久しぶりに土鍋で湯豆腐。学校から帰ってきた次男と一緒につつこうかと思ったのだが、次男はいそがしいようでつきあってくれないので、一人で半丁の豆腐をつるりと食べる。うまい。


先日の新聞のコラムに短歌が紹介されていた。


 児をあやし夫婦が代るがはるなす百面相に車内なごめり


日野原典子さんの『無碍』からの一首らしい。
「よく見かける車内風景である。まだ小さな赤子をあやしている。むずがっているのだろうか。夫婦が交代で「いないいないばー」などとやっているのだろう。周りの人がニコニコしながら眺めている。赤子の表情よりも若い夫婦のその一生懸命さに微笑んでいるのである。
それ以上何も言わない。しかし、背後から小春日和のようなあたたかさが漂ってくる。気持ちのいい作品。」というコメントがついている。
最近はわりと小さい赤ちゃんを連れた夫婦は車で移動したりすることが多いだろうから、あまり見なくなったような気がするのだが、僕が小さいとき、家族で乗っていた電車のなかで、まったく同じ風景を見たような気がする。四人掛けの隣のボックス席、むずがっていた赤ん坊がだんだん笑うようにって、母が僕の方を向いて小さな声で、「あれみてみ、なんちゅうかわいらしいんや」とニコニコしながら話しかけてきた。そんなこと言われなくても、さっきからずーっと見ていたのだが。


そういえば、小さいとき父と母と弟と家族四人で大阪の枚方だったか高槻だったかから帰ってくるとき、遅くなったからか京都から米原まで新幹線に乗った。初めて乗った新幹線だったが、もちろん自由席。ところが席が満席で座れない。立っているのはうちの家族だけだったような記憶なのだが。で、小さい弟が「座りたい」とぐずりはじめたのではなかったかな。すると近くの席のサラリーマン風の男性が、次の米原で降りるから、そのあとお座りなさい、とおっしゃる。父が我々も米原で降ります、と言って、礼を言ったと思うのだが、するとその男性は、弟を手招きして呼び寄せひょいと膝の上に乗せてしまった。小さな弟は知らない男の人の膝の上で一瞬びっくりしたような表情をしたものの、すぐにニコニコしてしまった。父も母も笑ってしまっていて、そのまま弟は米原までその人の膝の上に乗っていたのである。
このことを僕がよく覚えているのは、弟がうらやましかったからだろうか(笑)。


もちろん、こんなことを思い出したりしているのは、遠藤展子『藤沢周平 父の周辺』の影響である。とても読みやすい文章でしかもおもしろいので、これはすぐ読了できてしまいそうだ。