現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

『ブラック・スキャンダル』と味噌で飲む時頼

スコット・クーパー監督『ブラック・ス


13日(火)
終日、雨。夕方、暗くなってからまたよく降っている。


お米の精米など。


スティービー・ワンダーの曲は、たくさんのミュージシャンによってカバーされているが、INCOGNITOの「 Dont you worry bout the thing」もいいねぇ。この女の人はスティービーのテイストをちゃんと残しながら歌ってますな。これが難しいとおもうのです。この曲はアルバム『Innervisions』に収められている曲だけど、ええ、大好きな曲です。というか『Innervisions』の曲は全部好き。まあ『First Finale』も『Talking Book』ももちろん『Songs in the Key of Life』もだけど。この頃のスティービー・ワンダーは神がかってますな。1972年の『Music of My Mind』から1980年の『Hotter than July』までの7枚のアルバムは、スバラシイの一言につきます。一曲として変な曲がない。


一番カバーされているミュージシャンは、誰だ?やっぱりビートルズかな?でもスティービーもたくさんカバーされています。ところが日本人でスティービーの曲をいい感じでカバーしている人はいるのかな、あまりいないような。ビートルズは日本人もたくさん歌ってますけど。日本人にはスティービーの曲はなかなか歌えませんな。そんな気がしています。ええ。私も何度かカラオケで歌ってみたことがありますが、これが、あーた、さっぱりなんです。なにかどこかリズム感が違うのかな。フェイクする感じ、転調が難しいような。私の個人的な問題かと思っていましたが、カバーする日本人が少ないのを思うと、そうでもないのかも(笑)。



14日(水)
スコット・クーパー監督『ブラック・スキャンダル』(2015)をiTunesで観る。盛り上がりにいささか欠ける、なかなか後味の悪い映画ですな(笑)。主演のジョニー・デップはなかなか迫力があったけど。特にFBI捜査官コリノーの妻の寝室に見舞いに行くところなんか、ぞくぞくしました。恐くて。
1970年代のボストンって、あんな感じだったのかなぁ。


冬至は21日だが、もうこの時期すぐに暗くなってくるし、寒いし、ビールやお酒をすぐに飲みたくなってくるのだが・・・。僕はまあ、なにかつまむものがないと飲めないという性分ではなくて、ほんのちょっとしたものがあればそれでいいのです。吉朝さんの落語に「こうこのひとつもあったらええ酒かぁ」というフレーズがあるのですが、「こうこ」というのは、【香香】香の物、漬物のことですな。このあたりではあまり「こうこ」は使いません。「つけもん」ですな。
などと、ちょっと何かないかな、と冷蔵庫なんかをのぞいていると、つい思い出す話があります。


徒然草』第215段
平宣時朝臣、老の後、昔語に、「最明寺入道、或宵の間に呼ばるる事ありしに、『やがて』と申しながら、直垂のなくてとかくせしほどに、また、使来りて、『直垂などの候はぬにや。夜なれば、異様なりとも、疾く』とありしかば、萎えたる直垂、うちうちのままにて罷りたりしに、銚子に土器取り添へて持て出でて、『この酒を独りたうべんがさうざうしければ、申しつるなり。肴こそなけれ、人は静まりぬらん、さりぬべき物やあると、いづくまでも求め給へ』とありしかば、紙燭さして、隅々を求めし程に、台所の棚に、小土器に味噌の少し附きたるを見出でて、『これぞ求め得て候ふ』と申ししかば、『事足りなん』とて、心よく数献に及びて、興に入られ侍りき。その世には、かくこそ侍りしか」と申されき。


鎌倉幕府重臣平宣時朝臣が、老いてから昔話をした。『ある日の夕暮れに、執権の最明寺入道様(北条時頼)に呼ばれた。「すぐに参ります」と使者には伝えながらも、拝謁するのにふさわしい直垂がない。あれこれとしているうちに、また最明寺入道様の使者が来て、「直垂などがございませんか。夜なので変な格好でも良いから早く来てください」と言う。なので、よれよれの直垂で家にいたままの普段着の格好で参上すると、入道様は銚子とお猪口を取り揃えて待っていた。
『この酒を独りで飲むのが寂しくて、貴公を呼んだのよ。だが、酒の肴がない。人はもう寝静まっているので、何か肴にふさわしいものがないか、ちょっとあちこち探してきて貰えないだろうか』とおっしゃる。紙燭を灯して隅々まで探し求めるうちに、台所の棚の上に、味噌の少しついた素焼きの器を見つけ出した。「これを見つけました」と申し上げると、「この味噌で十分である」と言って、気持ちよく何杯かお酒を飲み、興に乗られました。あの時代は、そんなものだったなあ』と申された。



この話は高校生の時、古文の授業で習ったのを覚えているけれど、あの頃はなんとも思わなかったというか、徒然草はたぶん高校一年で習ったんだと思うけれど、動詞やら助動詞やら文法的なことをバタバタしているばかりだったんだろうな。
執権であった北条時頼の質素な生活ぶりを吉田兼好もよきものとして書いているんでしょうけれど、どうもこの頃、鎌倉武士たちも少しづつ暮らしぶりがよくなってきていて、それを戒めるためにこんな話を書き残したんじゃなかろうか、という話もありますね。
当然、当時は清酒ではなくてどぶろくの濁り酒ですね。ま、ちょっといい酒が手に入ると、一人で飲むのもいいんだが、一緒に飲んで話が出来る相手がいればなおのこといいに決ってる。使いを出して呼んだのに、なかなか来ないので、さらに使いを出して、格好なんかなんでもええがな、早よ来いや、と督促するというのもいいな。平宣時が紙燭を灯して台所をあちこち探すというのも悪くない。当時の夜の暗さが感じられるし。菜種油の行灯というか燭台の灯で飲むのはなんとなくとても美味そうだし。アテが味噌というのも悪くない。
えー、この時期なら柚子味噌か。あたしゃ柚子は大好きだし(笑)。味噌にネギを混ぜるだけでもいいだろうな。本格的にするならネギにかつお節も加えたいところか。なにが本格的かわからないが。ええ、ちょっと検索してみたら、胡麻とか山椒もでてましたが、そりゃ、ええでしょうね(笑)。
テレビの時代劇の夜のシーンは明るすぎるというのは、僕が中学生の時に誰かが話していたのを覚えていて、なるほど、と感心したものだが、黒澤映画なんかだとかなり暗いですが、でもとりあえずテレビやフィルムに役者さんの姿が写らないことには話になりませんわな。


一昨年は菜種油を少し絞りましたが、今年は菜種油はもちろんですが、ゴマ油もすこし搾ってみるつもりです。ええ、まだはっきりとは申せませんが(笑)。