現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

『リトル・フォレスト 冬・春』(2015)と友がみなわれよりえらく見ゆ

 森淳一監督『リトル・フォレスト 冬・

1日(土)、2日(日)と週末は名古屋で過ごす。名神高速は何度も運転したことがあるが、名古屋高速は初めての乗り入れ。一宮から16号線だの6号線だの、初めての道だし、名古屋近辺の地図が頭にもうひとつ入っていないので、ジャンクションというか分岐があるたびにいささか緊張する。



3日(月)
朝からよく晴れる。霜のおりる朝であります。朝から精米など。それから田んぼに出る。畔の点検。苗代の準備。
左の写真の麦の圃場のホンの一部にうちの麦の圃場も写っているのだが、なかなか色がいい(笑)。先月、やった肥料が効いてきているのだと思う。


午後になって風が強くなってきたな、と思っていたのだが、夕方、急に暗くなって雷と少し雨が降ってきたのにはびっくりする。いやはや。


森淳一監督『リトル・フォレスト 冬・春』(2015)を観る。前回で紹介した『「リトルフォレスト夏・秋』の続きです。主演のいち子は橋本愛、女友達のきっこが松岡茉優、2年後輩が三浦貴大、母親が桐島かれんという配役なども同じです。


橋本愛の雪かきの仕草や雪道の歩き方、さらに鍬の使い方がとにかくなっていない、話にならん(笑)。ま、でも仕方ないか。でも料理はおいしそう。上手。


雪の田んぼの景色が美しい。山里の春の景色が美しい!
山菜関係の天ぷら。フキ味噌。塩マスとノビルと白菜のツボミのパスタがおいしそう。
春キャベツの食い方は勉強になりますな。
農家では一人暮らしは、やっぱりどこか寂しそう。
母親の桐島かれんからの手紙、螺旋の話は、僕も昔まったく同じように考えたことがあります(笑)。


苦労してはかまを取って土筆の佃煮を作ったのに、それがホンのわずかな量になってしまって愚痴るいち子「土筆はやっぱり雑草なのよね。スギナが茂っちゃうと刈っても刈っても切れないし、根っこは細くて取りきれないし。」すると三浦貴大君扮するユウタが言うのだ。「いや、そういうけどさ、土筆が生えやすい環境を作ったのって人間でしょ、森を開いてさ。それより前、縄文時代とか、土筆が生える場所なんかわずかしかなくて、雑草どころか、貴重な山菜だったかもしれない。春を告げる大切な山の恵みとして、太古の人々は土筆を大切にしてきたんじゃないかなぁ。なんつうかさ、けなげに天を目指す大地の小さな精霊、みたいな。それにこれ、とってもうまいよ。土筆の香りもするし、さすがいち子ちゃん。」で、ナレーションで「コイツは分校の2年後輩。私はどうもロマンを語る背の高い男に弱いようだ。」と言うんだけど、でも三浦君はそれほど背は高くない。いや、カッコいいけど。しかしロマンを語る男がカッコよかったのは35年前の話ではないか?
女友達のきっこが薪割しながら愚痴る。「もうさぁ、うちの上司、最悪なのよ。自分の周りの狭い人間関係しか見えてなくて、仕事の打ち合わせだったのに、社長を延々と褒めあげんの、社外の人も居る席だよ。ホイホイ仕事引き受けて、自分の首しめて、結局こなせないし、そのつけ全部周りの人間に押し付けて当然って顔しているのよ、頭来る。失敗はみんな他人のせい、成功は自分のおかげ。その場限りの責任感まったくなし男で、薄っぺらで、その上、その上、その上、・・・」するとそこにきっこのおじいちゃんが急に登場。「なんだおめぇ、人の悪口ばぁっか語って。人のずるいところのわかんのは、自分にもおんなじ心があるからっだぞ。ずうたいばかりでかくなって、情けねぇ。」と叱って退場。「じいちゃんに怒られたの久しぶりだ。なんか、すっきりしちゃったぁ。」


全体に美しいが地味な映画だと思うが、こんなシーンにちょっとギクリとする。夏からはじまって秋冬春とそれぞれ一時間づつのお話なのだが、合計で4時間の映画だが、悪くない。なにより落ち着いている。ただ山里で農業しながら伊一人暮らしをする若い女の子という設定には、どこかずっと違和感があるが。原作の五十嵐大介の漫画の方も読んでみたい気になっているが・・・。


   友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ   石川啄木 「一握の砂」


これはたぶん、啄木の歌の中では私が一番好きな歌かも。ところが、この歌を、「友のみな我よりえらく見ゆる日は花を買い来て妻とたのしむ」とずっと覚えていて、いつから間違って覚えていたのだろう。たぶん、40年ほど前かもしれない。しかし、「たのしむ」が「したしむ」となると、どうもこれが妙にエロチックな感じになって、なるほどそうなのか、と唸ってしまった次第。


正しく覚え直すように筆ペンで書いてみた。なんで書いてみたのか、なんでヘタな字をブログで紹介するのか、人間というのはよくわからない(笑)。