午前中は同じ村の53歳の知人の葬式に立つ。心筋梗塞ということでしたが、あまりに突然だし、子どもの頃は一緒に遊んだこともあるし、若い人なので、なかなかにショック。南無。Vaya con Dios!ま、何を書いても、もうどうしようもないのだが・・・。
午後は精米など。
ケン・ローチ監督『わたしは、ダニエルブレイク』(2016)を観る。第69回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール作品です。いやー、いい映画でした。
ヨーロッパの福祉制度はもう少し行き届いたものではないかと漠然と思っていたけれど、映画を見るとイギリスの福祉制度はそうでもないらしい。さまざまな手当てを受けるための申請手続きが煩雑、理不尽、非人道的。弱者をどんどん追い込んでいく。役人たちの態度も冷たい。ネット経由で申請するように言われるが、コンピュータの苦手な人はたくさんいる。それでも困ったときのちょっとした助け合いの場面もいくつも描かれるのが救いといえば救い。
社会の格差や分断ということが言われてどれくらいになるだろう。日本でも世界でも、いよいよひどくなってきているような気がする。自分のことしか考えない、考えられないということは、要するに、世の中の全体を見る目を持たないということですね。社会のありよう、世界の仕組みを見ようとしていないということです。今の自分があるのは、自分だけの頑張り、力だけでやってきたのだといういささか不遜な考え方でありましょう。世の中や世界はいろんな人の頑張りで成り立っているし、その恩恵を受けて暮らしているという発想があれば、○○ファーストという考え方がすぐに破綻するのは明らかだと思います。それにしてもこの映画は「文部科学省特別選定作品(青年・成人・家庭向き)」らしいが。しらけるなぁ(笑)。文部科学省というか、国は社会の格差や分断の解消のためにどんな効果的な政策を示したのか。(青年・成人・家庭向き)って、なんだ?
今朝の中日新聞の記事とコラムと二回「山川異域 風月同天」という漢詩の一節が出てきていた。他にも、ネットニュースで最近同様のニュースをいくつか読みました。今、新型肺炎、新型コロナウィルスで、中国はもちろん、日本もてんやわんやですけれど、日本からマスクなどの支援物資が続々と贈られている。それに対して中国の要人や人民日報系の機関誌が「日本の人々の温かいふるまいに感謝している」と述べたというニュース。中国メディアが日本からの支援物資や励ましのメッセージを繰り返し報道しているというニュース。
日本から贈られた支援物資の箱に「山川異域 風月同天」と書いてあったのだそうです。「山や川は違っていても、同じ風が吹き、同じ月を見ている」という意味ですね。天武天皇の孫、長屋王が約1300年前に袈裟を唐の高僧・鑑真に贈った時、その袈裟に刺繍がしてあって、その刺繍の文字が「山川異域 風月同天 寄諸仏子 共結来縁 (別の場所に暮らしていても、自然の風物はつながっている。この袈裟を仏弟子に喜捨し、共に来世での縁を結ぼう)」だったそうで、これを見た鑑真が来日を決意したという話が残っているようです。
誰でもちょっと経験すればすぐわかることですが、自分が本当に苦しいときに差し伸べられた手や言葉ほど身に染むものはないですね。
僕は政治や外交のことはさっぱりわかりません。この手のニュースにも政治的な思惑が日中ともにあるのかもしれませんが、相手のことを思いやる心と歴史と古典と言葉に精通した、人の世のことをよく知っている志の高い人に、政治も外交もやって欲しいです。