現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

稲刈りと『愛妻物語』



5日(日)
 朝から晴れる。
 朝のうちは事務仕事を少し。雨のうちに籾擦りはすでに全部終わっているので、乾燥機は空っぽです。で、田んぼを見に行く。昨日の雨の具合はどうかな?朝露はもう消えてるかな?お、すでにあちこちで稲刈りがはじまってます。これはうちも始められそう。
 お昼前から稲刈り。うちの乾燥機がいっぱいになったので、すこし農協のカントリーエレベーターに運ぶ。
 15時半に乾燥機に火を入れる。その後また田回り。

 新藤兼人監督『愛妻物語』(1951)を観る。主演は若き乙羽信子宇野重吉です。新藤兼人の監督デビュー作で自らの下積み時代を描いた自伝的作品ということです。シナリオライターの話です。シナリオライターの話なので、どんなシナリオになっているのかと思いましたが、ええ、ちょっと悲しいメロドラマでした(笑)。昭和17年、18年という戦中の厳しいムードは描かれていましたが。いえ、メロドラマが悪いということではなくて。まあ、でも僕としては少しモノ足りませんでしたが、それなりに楽しめました。乙羽信子は美しいし、おじいさんでない宇野重吉は初めて観るような気がしましたが、若いときからおじいさん風ですね(笑)。
 乙羽信子宇野重吉の二人は駆け落ちして下田から京都にやって来るのですが、戦後すぐの京都の風情がよろしおまんな(笑)。
 で、お隣の住人は友禅の下絵を描く仕事をしている職人の夫婦なんですが、それが若き殿山泰司なんです。まだ少し髪の毛があります(笑)。最初の登場は偏屈な感じなんですが、若い夫婦に心を許していきます。正月に殿山泰司宇野重吉が二人で飲むんですが、殿山泰司が言うんですな。
 「わてはな、こないしょもない下絵描きですけどな、これでも若い頃はひどう苦労したもんどす。根がドンどすよってにな、人の倍も骨が折れたわけどすわ。」
 「おじさんは、やっぱり才能があったんですよ。一人前になれたんですから。」
 「ちがいまんがな。才ちゅうのんは、わてにはおまへん、おまへん。ただもう、むやみやたらに辛抱しただけどすわ。粘り通しただけどす。ま、わての仕事、いっぺん、見とくれやす。」と言って、修行時代の下絵の数々を見せたあと、「沼崎はん、辛抱しなはれや。」「僕なんかとってもおじさんの真似なんかできそうにもありませんよ。」「なにをいうてはりまんねん。元気を出しなはれ。元気を。えへへへへ。男ちゅうもんはな、女房を養っていかななりまへん。いやがおうでもがんばらないけまへん。なぁ。しっかり、しっかり、やりまひょで。」
「歌いまひょ!歌を歌いまひょ!」と言って二人で酔っぱらって歌うのが、与謝野鉄幹の「人を恋ふる歌」なんですな。わりと長い詩なんですが、最初の一節が、

      ♪妻をめとらば 才たけて 見目うるわしく なさけあり
        友をえらばば 書をよみて 六分の侠気 四分の熱

という、ここが一番有名で、僕も読んだり、聞いたりしたことはありましたが、なんだか初めてゆっくり歌詞を味わいながら聴いたようなきになりました。ええ、殿山泰司のちょっと調子外れの歌声で(笑)。
 まあ、しかしなんですな。独身の若い男性(しかもちょっとインテリの)が、友人と一緒に歌う歌ですな、これは。「才たけて 見目うるわしく なさけあり」まあ、それは独身男性の理想的な結婚相手であって、なかなか三つとも揃っている娘さんは、いるようでいないのですが、結婚するときには三つとも揃っているような気になってしまうのですな、不思議と。熱情と若さゆえに(笑)。
 そのうち。三つは揃っていないけれど、二つくらいはあるような気になってくる。残念ながら「才はたけて」はなかったけれど、「見目麗しく」と「情けあり」の二つはあるので、まあ、ええ、まあ、上等です。とか。残念ながら「見目麗しく」とはいかなかったけれど、「才たけて」はあるし、「情けあり」だから、まあ、上等の部類だな。とか。「才たけて、見目麗し」いけれど、ちょっと冷たいところもあるよなぁ、まあ、冷たいと感じるのは彼女の才がたけて合理的な考え方だからかなぁ、まあ、上等と思っておかないとバチがあたるなぁ、とか。でもせめて最後まで「情けあり」ではいてほしかったなぁ。とか。ところが不思議なことに、ふとした言葉や仕草に、やっぱり「才たけて 見目うるわしく なさけあり」のいい奥さんだなぁ、と思ったり。そんなことを繰り返しながら、ああ、やっぱり才は一瞬はじけたような気がしたけど、一瞬だったなぁ。もうどう考えても見目麗しくという歳でもないよなぁ。情も子どもたちに対してはたっぷりあるけど、わしにはどうなの?と言ってみたくなるなぁ、と云うことになりますわな。そのあたりどうですか?ご同輩(笑)。
 などと好き勝手なこと書いていると叱られますな。
 あ、友人を選ぶのなら、読書好きの賢い人で、義理人情に厚く、何をするにも情熱を注ぐような人がいい、という、まあ、それはそうだけど。でもあとは正直な人であってほしいな。うん、まあ、いろいろですけど。

6日(月)
 今日も朝から晴れる。ビビ号の散歩に出る。
 籾の乾燥ももうすぐ上がりそうなので、籾擦りをしてから稲刈りに出る予定です。