現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

村上春樹『ノルウェイの森』再読。


今日はときどき雨が降ったりというか時雨のようで、風は強くて冷たいし、田んぼに出る気がしなくて、家で、春休みになった子供たちとすごす。
といっても長男や長女はちょこちょこっと掃除をすませると部屋に入ったままだし、次男や次女も友達が遊びに来たりすると、僕は一人になってしまうので、『ノルウェイの森』を一気に読む。


ノルウェイの森』は1987年9月に出ました。僕は大津市堅田琵琶湖大橋のすぐ近くの本屋さんで買ったのだけど、第1刷の本でした。すぐに読んで楽しんだんだけど、緑ちゃんの魅力ぐらいしか覚えていない。その後、日本中が『ノルウェイの森』のブームになって、ささやかにこっそり愛していたつもりの作家だった村上春樹は有名になってしまって、いやはや、やれやれ、と思ったのを覚えています。初版の本はブームの中、知り合いに貸したきりになってこの文庫で読むのが二回目、再読になります。20年以上経ってしまったことになる。ホントにいやはや、やれやれ、と言いたくなりますね。


再読の感想。なんだか隅々までくっきりしたような気がしました。というか、こんな話だったのか、というところもたくさんあった。こんなにたくさん心を病んだ人が出てくる小説だったっけ?あれこんなにたくさんの人が自殺する話だったっけ?とか。緑ちゃんはやっぱり魅力的。何度も笑った。レイコさんも永沢君もハツミさんもおもしろかったけど、直子については、まあ、わかるような、でもよくわからない。
レイコさんが石田玲子という名前だとわかって、そっくり同じ名前の女の子を知っていることに気がついたり。二十歳ということが何度も出てくるけど、法律で成人になるとされている年齢って、やっぱり一区切りあるんだなぁとか。たくさん手紙を書くんだねぇ、ワタナベくん、とか。僕も二十歳の頃はたくさん手紙を書いたような気がするけど。大学の風景の描写、大学の周りの喫茶店の様子、舞台は1969年とか1970年なんだけど、上手に書きますねぇ、村上さん、とつぶやいてみたり。


そういえば緑ちゃんの父親の病室へいったワタナベくんが「キウリ」に海苔をまいて醤油をつけてポリポリ食べるんです。「うまいですよ。シンプルで、新鮮で、生命の香りがします。いいキウリですね。キウイなんかよりずっとましな食いものです。」なんてぽりぽりとキュウリを二本食べると、今まで食欲もほとんどなく死にかけているような緑ちゃんのお父さんがキウリを食べるんですよね、海苔巻いて醤油つけて。で、「うまい」って言うんです。「食べ物がうまいっていいもんです。生きてる証のようなもんです。」とワタナベくんは死にかけている緑ちゃんのお父さんに言うんです。こんなシーンがあったなんてまったく覚えていなかったのですけど、いいシーンでした。


当時「100%の恋愛小説」というコピーが本の帯に書いてあったような気がするのですが、今ごろになってその意味がわかったような気がしました。というか20年前に1回読んだだけの時は、要するに何もわかっていなかったような気がするくらいです。ポルノ小説のようだという話もありましたが、まあ「100%の恋愛小説」ですからねぇ。そういうことも出てきます。2010年公開予定でにベトナムのトラン・アン・ユン監督によって日本を舞台にして映画化されるということです。うーむ。
ビールを飲みながら読んでいたんだけど、途中からあんまり寒いのでウイスキーを舐めながら読むことにしました。文庫本で上下二冊、楽しめました。BGMにはiTunes Storeで集めた「Never Let Me Go」が16種類僕のiTunesに入っているので、次々と流す。もちろん2005年に出たカズオ・イシグロの『Never Let Me Go(私を離さないで)』とどこかにている部分があると感じたからです。