現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

青田風と「朝の食事」と「離婚届」


18日(木) 風があってありがたい。
19日(金) 今日も風がある。昨日より爽やかな感じ。


両日ともミネラル肥料やら腐食酸やら穂肥やらを散布したり、畦畔の草刈りをしたり。
風があったので、暑さにはめっぽう弱い父が草刈りの手伝いをしてくれて、僕が散布している間に刈り払機でだいぶ刈ってくれた。ありがたい。


肥料散布をしているとき、軽トラの中でお茶を飲みながら休憩していたら、ラジオからジャック・プレヴェールの「朝の食事」という詩をアナウンサーが朗読しはじめた。知らなかった詩でしたが、上手な朗読で聞き惚れてしまった。い詩でした。訳は大岡信だそうです。



     「朝の食事」 ジャック・プレヴェール


  茶碗に
  コーヒーをついだ
  茶碗のコーヒーに
  ミルクをいれた
  ミルク・コーヒーに
  砂糖をいれた
  小さなスプンで
  かきまわした
  ミルク・コーヒーを飲んだ
  それから茶碗をおいた
  私にはなんにも言わなかった
  タバコに
  火をつけた
  けむりで
  環をつくった
  灰皿に
  灰をおとした
  私にはなんにも言わなかった
  私の方を見なかった
  立ちあがった
  帽子をあたまに
  かぶった
  雨ふりだったから
  レインコートを
  身につけた
  それから雨のなかを
  出かけていった
  なんにも言わなかった
  私の方を見なかった
  それから私は
  私はあたまをかかえた
  それから泣いた。


なるほど。これは、いかにも、ツライ。ツライが詩になっていますな。
続けてラジオでは、今度は?橋源一郎氏が谷川俊太郎の「離婚届」という詩を朗読しはじめた。



     「離婚届」 谷川俊太郎


  おまえに黙って区役所にゆき
  ぼくは離婚届の用紙をもらってきた
  おまえが眠ってしまったあとで
  うすっぺらのその紙に
  ぼくは憶えているだけのことを書きこんだ
  七年前の二人の結婚式の日付も
  あの日は底ぬけにいい天気で
  ぼくらは教会の芝生の上で写真をとった
  それからぼくはその紙でヒコーキを折った
  うすいのではそれはちっとも飛ばなくて
  眠っているおまえのお尻の上に墜落した
  もういちどその紙をひろげ
  ぼくは自分の几帳面なペン字をみつめた
  それを丸めて便所に捨て
  ぼくは眠った
  おまえの隣で


これもいいですね。紙飛行機が ”眠っているおまえのお尻の上に墜落した” というところがとてもいいですな。離婚届などという不穏なタイトルだけど、ぜんぜん不穏じゃない。結婚7年目の男が夜中に一人でゴソゴソやっているんだけど、いいですな。

日曜日が投票日だけれど、しかし選挙カーもあまり回ってきていないなぁ(笑)。夜、長女が帰ってきた。初めての投票権なので、投票するために帰ってきたのだそうだ。うーむ。すばらしい。「どこに投票するんや?」と聞くと、「言わん」という返事だった。もう決めているのか?「お父さんは、放射性廃棄物の処理もできひんのに、原発を再稼働したり、原発をあろうことか外国に売ろうとしていたりやな、暮らしが大きく変わってしまいそうなのに、ほとんど何の説明もないままTPPをすすめようとしているところには投票せんつもりや。」というと、「ふーん、それはどこなん?」という返事でした。ま、あまりそういうことには興味ないみたいです。いったい、どこに投票するつもりなんや。