現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

藤沢周『安吾のことば 「正直に生き抜く」ためのヒント』を読了


今日は雨の予報でしたが、一日雨はなく、陽射しがありました。


藤沢周安吾のことば 「正直に生き抜く」ためのヒント』(集英社新書)読了。藤沢周って、最初、藤沢周平の間違いなのかと思いましたが、芥川賞作家だったんですね、まったく知りませんでした(笑)。でも安吾と同郷の新潟市出身で、わりと家も近いとのことです。なるほどなぁ。でまあ、藤沢周としては、安吾は先輩であり兄貴になるわけですな。
で、その坂口安吾のカッコいいことばをいくつか集めて、コメントを添えてみました、という本です。
昔、開高健は「安吾は評論やエッセイがうまくなりすぎて、小説が書けなくなってしまったんだ。」とどこかで書いていたが、確かに安吾は評論やエッセイがカッコいい。だから名言集とか箴言集というようなものを編みたくなるのは、よくわかります。開高もコピーライターだったし、名言集とか箴言集を作りたくなる作家ではありますね。あと梶井基次郎とか、中島敦とか。って、あーた、自分の好きな作家だからじゃないの?と言われればその通りですけれど。あ、藤沢周平もそういう作家かも。
こういうものはファンがファンのために作るものですわな。一度も安吾の文章を読んだ事のない人には読んで欲しくないな。って、そういう人は買わないか。
でもね、この本は12月21日第1刷という出たばかりの新書です。そして安吾ちょうど終戦直後に『堕落論』で人気を得たような、あの時代の作家ですから、わりと政治的なことや戦争について書いています。ですから藤沢周氏も今の総理大臣に読んでもらいたい。総理大臣が読んだら、どう思うだろうか、というようなこともあちこちに書いてくれています。だって秘密保護法だの、安保法制だの、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更だの、「美しい日本」や「日本をとりもどす」のプロパガンダ文部科学省が国立大学の文系学部の改廃・再編をいいだして、経済効率優先・有用性重視などなど、戦争に突入していくときの空気、「魔物のような時代の感情」に近いと指摘しながら安吾のフレーズを紹介してくれています。


現在では青空文庫で読める坂口安吾の作品はものすごいことになっています。ああ、相変わらず人気あるんだなぁ。
もうほとんど全集じゃないか。「ラムネ氏のこと」「堕落論」「続堕落論」「教祖の文学」「不良少年とキリスト」「青春論」「文学のふるさと」「日本文化私観」と昔、文庫でなじんだものを少し読んでみたけれど、やっぱりいいですね。坂口安吾を先に読んだので、志賀直哉の小説を少し読んでみようと思ったけれど、少しもおもしろくない。島崎藤村は『破戒』を読んだら、むちゃくちゃよかった。小林秀雄と太宰は、安吾を読むより先に読んでいたし、安吾も一目置きながら書いているのがわかるので、安吾がどれだけ罵っていても、安心なのだ。だってやっぱり小林秀雄の「平家物語」は、読めばやっぱりドキドキするし(笑)。(そういえば、『双調平家物語』の橋本治は、どうしてるんだろう。なんだかあまり最近、新刊が出てない気がするが・・・。)
しかしなんだな、昔は作家同士でも評論家同士でも、ケンカか?と思われるような文章をよく書いてますな。実際よくケンカもあったみたいだし。今は作家がケンカしたなんて話はあまり聞かない気がするが、西村賢太氏は、どうなんだろう。


しかしなんだな、とさらに言えば、安吾といえばこの林忠彦の写真だな。こんなの見たら安吾のことが忘れられなくなるし、真似したくなる。それで僕は友人や後輩の下宿部屋シリーズを撮ってまわったことがあった(笑)。


朝から陽射しが出て、久しぶりに金糞山が見えたら、真っ白になっていた。もちろん伊吹山も真っ白。どうだろう700メートルぐらいから白くなっているのだろうか。