現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

杉山平一の詩をふたつ


夜の間に少し降ったらしい雨は朝には概ね止んでいた。でも今日は基本的に曇り空。夕方から、少し雨。


午前中は精米など。午後はお米の整理や苗箱に土入れ。それから田回りなど。
どうも土入れした苗箱の数が足りないので、120箱ほど土入れする。農協に土をもらいにいって「今ごろ、苗箱の土をもらいに来ている人はいないんとちがう?」「いやいや、今日、隣村で、「コシヒカリ」の種籾がないか?って聞いておられましたから。」ということでした。うーむ。苗代、失敗されたのかな?
浸種しておいた「コシヒカリ」の種籾だが、水に浸けておいただけなのに、すでに芽がでてきているような感じなので、あす催芽機に入れずに、播種して発芽機に入れることにします。三回目の最後の播種になります。


夕方、田回りをしていたら、軽トラのラジオから杉山平一の詩の朗読があった。「夜学生」という1942年に出た詩集のタイトルにもなった詩です。1942年、戦中ですな。
僕は名前は知っていたけれど、詩を聴いたのは初めてでした。



     夜学生


   夜陰ふかい校舎にひびく
   師の居ない教室のさんざめき
   あゝ 元気な夜学の少年たちよ


   昼間の働きにどんなにか疲れたらうに
   ひたすら勉学にすすむ
   その夜更のラッシュアワーのなんと力強いことだ


   きみ達より何倍も楽な仕事をしていながら
   夜になると酒をくらってほつつき歩く
   この僕のごときものを嘲笑へ


   小さな肩を並べて帰る夜道はこんなに暗いのに
   その声音のなんと明るいことだろう


   あゝ僕は信じる
   きみ達の希望こそかなえらるべきだ
   覚えたばかりの英語読本(リーダー)を
   声高からかに暗誦せよ


   スプリング ハズ カム


   ウインタア イズ オオバア




やさしい詩だ。わかりやすい詩であります。軽トラを運転してたのだが、ふいに泣けてきた。また木津川計の朗読と解説がいい。何も解説する必要のない詩だけれど。“ウインタア イズ オオバア”泣けるぜ。続いてまた朗読される。




     窓


 いつの頃からか、その古ぼけた侘しいアパートの一つの窓が、私の往来する道の目じるしになってゐた。 その窓には沢山の子供が見られるのだった。  おそらく六畳もあるまいと思はれる部屋に、幼い四五人の子供のある家族が生活をしていた。 父親がゐたかどうか、私は一度ならず、まだうら若くしてやつれた母親らしい人を見た。  開けられた窓には道具も見えず、紐にかかるお襁褓が見え、一枚の屏風に色褪せた絵や写真の貼られてゐるのが見えた。 姉は赤児の守をし、弟は棒切れをもち、強く育ってゐるやうだった。  冬、閉ざされた窓の中には灯がともり、乏しい夕餉の膳ででもあったらう、はしゃぐ笑声と姉の歌う小学唱歌が通りすがりの私の耳にきこえてくるのだった。  「はげしき雨風、天地暗く……」まこと、愛に充ちた彼ら貧窮の生活をして、つつがなく強く強く育たしめよ。 祈る私の切なるまなざしのうちに、その窓はあるときは灯り、 あるときは暗く消えてゐた。




散文詩ですな。日常の中のなにげないシーンなのだが、二つとも祈りの詩ですな。
アマゾンで杉山平一詩集をクリックしてしまった。