現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

『三人の妻への手紙』と訃報と『小原庄助さん』と八月大名

21日(土)
 夜に、ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督『三人の妻への手紙』(1949)を観る。楽しめました。40年代のアメリカの生活、暮らしぶりが見えているんだと思うけれど、1945年が第二次世界大戦終結ですからね。負けるはずです(笑)。
 コメディ映画で、なんだか台詞も多いような気がしましたが、家政婦さんがおもしろいことを話していそうなんですが、字幕の日本語のせいもあるのか、あまり笑えませんでした。でも何度か笑いましたよ(笑)。マンキーウィッツはこの映画でアカデミー賞の監督賞と脚本賞をとったとのこと。なるほど。知っている役者さんは若いカーク・ダグラスだけで、貧乏だけれど熱心でカッコいい教師という役でした。しかしアディがどんな女性だったのか、けっこう気になります。
 この『三人の妻への手紙』の設定、いつやったか吉本新喜劇でもパクってました(笑)。

 そう言えば、先日、田回りして、ちょっとクサネムを抜いていたら、田んぼのすぐそばの木が10本ばかり生えていて下には雑草も繁っている薮というか、ちょっとしたブッシュに、たぶんメスのキジが飛んできて、その後盛んに鳴いていた。キジはメスも鳴くのかな。キジはケンケンと鳴くというけれど、実際はグェーン、グェーンとけっこうだみ声ですな。

 笑福亭仁鶴さん、僕が小学生の頃から人気者に。一度うちの村の文化ホールに来られましたので、一席聴きました。何の噺だったか忘れてしまいました。ただ出囃子にのって出てこられると客席から盛んに声がかかるので、上機嫌で「ありがとうございます。テレビも観てくれてはりまっか?どっちですか?生活笑百科ほんわかテレビ?」と言われると、客席からまた「両方!両方!」と声がかかってまた上機嫌でマクラを話されたのを覚えています。うーむ。
 それからノーベル物理学賞益川敏英さん。「小林・益川理論」「CP対称性の破れ」など、受賞の時に新聞にノーベル賞をもらった研究について説明がありましたが、読んでもなに一つ理解できなかったことを覚えています。といって他のノーベル賞のことなら理解できるというわけでもないんですが(笑)。それでもなんとなくどういう研究で、どういう成果だったのか、ぐらいは新聞でボンヤリとはわかったのでしたが、この「CP対称性の破れ」とかチンプンと言われればカンプンと応えるしかありませんでした。でも益川先生はその後、物理学のことだけでなくて、日本の教育や平和について、また政治についてもズバズバと発言されていて、こちらの方は私にもよくわかりました。
 それから今月になってすぐの頃だが、学生時代の友人の訃報を知らせてもらう。近くには暮らしていないので卒業後実際に会って飲んだのは二度か。電話は数年に一度という感じだったが、強烈な不意打ちをくらった感じ。うーむ。


22日(日)
 朝早く起きて事務仕事。そうして一晩寝かした書類をPDFにしてメールで送る。不備はあるかもしれないが、あるだろうが、ちょっとだけホッとする。
 今日から作業所を秋の作業が出来るように、あれこれ準備をはじめる。まあ、最初は掃除からです(笑)。それから水口から水が漏れるのを直そうと、ホームセンターでコーキング剤を買ってきて、コンクリートのひび割れをうめたり、止水板のすり減りを補強したりする。止水板の補強は僕のアイデアだが、もう少しコーキング剤を乾かさないと、ひっついてしまって止水板が動かなくなってしまうのもヤバいので、少なくとも一晩はこちらも寝かせるつもり(笑)。

 清水宏監督『小原庄助さん』(1949)を観る。主演は大河内傳次郎です。白塗り以外の普通の顔の大河内傳次郎は初めて見たような気がします(笑)。昨日見た『三人の妻への手紙』と同じ1949年の作品。終戦から4年目ですね。同じ白黒映画。ですが、画面の景色からも戦場にならず戦争で勝った国と爆弾を落とされ焦土となって戦争に負けた国の違いをすぐに感じました。でも映画は思いのほかおもしろく楽しめました。
 『小原庄助さん なんで身上(しんしょう)つぶした 朝寝 朝酒 朝湯が大好きで それで身上つぶした ハァ もっともだー もっともだー』この歌詞はなぜだか小学校の時くらいから知っている。この間の手の「ハァ もっともだー もっともだー」がいいですな。
 大河内傳次郎が身上をつぶしてしまうなんとも鷹揚な人物を好演しています。それから奥さん役の風見章子も奉公の婆さん役の飯田蝶子もスバラシイです。悪い人物が一人も出てきませんな。そうして日本の戦前・戦中のある種封建的な大地主を中心とした社会のしくみが戦後変わっていきます。村長選挙の応援演説などでも、人角の人物であることがわかります。いや、ハリウッド映画のキラビヤカさはどこにもないけれど、名作ですな。ええ、よい映画でした。

 小谷野敦谷崎潤一郎伝 堂々たる人生』(中公文庫)を読みはじめる。谷崎はあれこれスキャンダルの多い作家だったし、家族にこんな人がいると大変ややこしことになって困るのは間違いないが、堂々たる人生であることも間違いないわな、確かに。

 しかし、新しい文庫本の値段がすごく高くなってきていますね。まあ、いろいろ事情もあるのだろうことは理解できるが、それにしてもと言いたくなる。でも今コンビニに行って1430円でいったい何がどれだけ買えるのか、ということを思うと納得してしまう。まあ、いったい何がどれだけ買えるのか、とリキんでみても、あーたの場合、どうせビールとおつまみのことを考えているだろう?とお見通しだろうけれど。

 この八月になってから知ったのですが、俳句の季語に「八月大名」というのがあります。初秋の季語です。ネットの歳時記には「八月にちょっとした大名気分を味わうということ。陰暦の八月は刈り入れ前の農閑期。農家ではこの時期を利用して客を招くことが多く、酒肴などにささやかな贅沢も許された。」とあります。また別の歳時記には「 農家にとって八月は、一年のうちで最も仕事が少なく、気楽な月であることをいう。」また別のには「農閑期にただ休むだけでなくご馳走を食べること」と。広辞苑には【八月大名】(はちがつ だいみょう)農家にとって8月は労働をあまり必要とせず、気楽な月であることをいう。《広辞苑・第五版》とも。
 こんな季語があるとは、ちょっと笑える。僕が就農して一年目の八月。父は当時、僕が就農して大いに不機嫌で、僕が「なんかしょーうか?なにしたらええんや?」と訊くと、「なんにもない!今はなんにもない!」と怒って返事されたのをよく覚えている。あの当時は作付け面積も今の1/5ほどだったので、確かになんにもない時期があったんだろうな。今はとてもそんなことは言っていられなくなったが、それでもお盆前後は、さすがに大名気分とはいかないが、すこし気楽。でも秋の作業の準備が始まったので、これからはバタバタが続きます。

23日(月) 処暑
 外が明るくなってきたけれど、雲が低く垂れ込めて小谷山も見えない。
 今日は二十四節気の「処暑」ですね。立秋から数えて15日目ごろ。厳しい暑さの峠を越し、朝夕には涼風が吹き、虫の声が聞こえてきます。暑さが和らぎ、穀物が実り始めますが、台風の季節の到来でもありますね。
 それからこのあたりの地蔵盆でもあります。でもコロナだし、どうなるのかな?