現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

『未来のミライ』と事務仕事とエネルギーのことと食糧のことと『三計』のことなど

10日(木) 
 晴れた。少し暖かい。終日、事務仕事。長男が荒起しに出てくれる。
 夕方、細田守監督『未来のミライ』(2018)を観る。楽しめました。ちょっと思っていた感じとは違ったけど、家族の物語。なるほど。まあ、日本であまり人気が出なかった理由もちょっとわかるかな。いささか理屈っぽいところがありますな(笑)。会話というか言葉で説明しようとしているところがありますな。でもおもしろいですね。絵もきれいだし。若い夫婦の会話を聴きながら30年ほど前の自分を思い出しました。

 8日の日本農業新聞に載ったコラム記事。
 ロシアとウクライナの戦争で日本の安全保障をどうするんだ?、などと、勇ましいことこの上ないけれど、安全保障ということでは、エネルギーの安全保障や食糧の安全保障も同時に、あるいは先に考えていかないといけないような気がしています。
 実際にこのところのガソリン代の値上がりにはあわてていますし、ちょっとクルマの運転の仕方も滑らかで無駄な燃料を使わない運転の仕方を心がけていますし、それにガソリンだけでなくて、軽油や灯油もガンガンと値が上がっていますね。さらに小麦が値段を上げているそうです。さらに各種のタネも。レアアースはもちろんですが、肥料になるリン鉱石カリウムも。日本には化石燃料をはじめほとんどエネルギー資源がありませんから、それは輸入に頼らなくてはなりません。だから国際的に信用もされ信頼もされて、広くいろんな国と上手に付き合って輸入できるようにしなくてはなりません。同様に食糧も自給率が37%ではどうしようもないような気がするんだけれどなぁ。

 辻井農園では「安心して食べていただけるおいしいお米」を標榜しているので、ずっと緑肥を使った無農薬の有機栽培に取り組んできたんですけれど、緑肥にするナタネやヘアリーベッチやレンゲのタネがすごく高くなってきていますし、米の販売農家としては、さすがに鍬とスコップだけでは間に合わないのでトラクタも田植機もコンバインも軽油で動かさないといけません。
 ま、実際に田んぼを耕す百姓には荷が重い話なんですけれど、5年後、10年後ぐらいの百姓のありようを想像してみるんですが、・・・(笑)。
 私が小学校の頃、学研の「学習」と「科学」のどちらかで原子力船「むつ」が紹介されていたんですよね。「原子力は夢のエネルギー」という時代です。でも「むつ」はすぐにトラブルがあって今は原子炉を下ろしてディーゼルエンジンを積んで「海洋研究船みらい」になりました。

 思い出したけれどあの小学校の時に担任の先生が何の授業だったか忘れましたが「原子力って、いうけれど、あれは広島や長崎に落ちた原爆と基本は同じで核分裂なんやな。ものすごいエネルギーが出るんやけど、それを一瞬で出してしまうのが原爆。制御して、ゆっくりジワジワとエネルギーを出して、発電するのが、原子力発電所原発原子力いうて、原爆とか原発とか言うけど。原子力にはもう一つあって、核分裂とちごて核融合というのがあります。核融合は太陽と同じ。水素爆弾、水爆って聞いたことあるやろ。あれは核融合の爆弾。核融合核分裂以上のすごいエネルギーが出るので、最強の爆弾。でもあんまりすご過ぎてゆっくりジワジワと爆発させることができんし、まだそれを閉じこめておく方法もわからんのや。で、最初の核融合をさせるのに猛烈なエネルギーがいるので、それに核分裂のエネルギーを使うんや。原爆を起爆装置にして水爆は爆発するんやで。核融合は水素を使うんやけど、水素は地球上にいっぱいあるので、しまえてまう心配がないんや。核融合発電所ができるとええんやけど。」と聞いた覚えがありますが、こんな話小学生には難しいし、中学で聞いたんかな?記憶の混乱があるかも(笑)。ええ、記憶の混乱はしょっちゅうですけれど。
 水の電気分解の実験って、中学でするんでしたっけ?試験菅に水素をためて、マッチでスッと火をつけると、「ポン!」って小さな爆発音とともに燃えたのを覚えています。水素は燃えると水になるんや、って聞いたけど、水を見た記憶はないです。
 核分裂にしても核融合にしても、原子力は理論上は夢のエネルギーなのかもしれませんが、まだまだどちらも技術不足で人類が安心して使えるものにはなっていませんね。水素燃料、水素燃料電池なんかも夢のエネルギーというかクリーンなエネルギーと言われていますが、技術開発には応援をしたいです。あらゆる技術開発に。いろんな学問があっていいと思っていますので(笑)。昆虫食や藻からバイオ燃料を得るとか、なんだかいろいろありそうなんですけどね。
 「教育は国家百年の計」って言うと、あーたはいつの時代のオジジか、古くさい。「皇国百年の大計」ですか?と言われそうですが、安全保障なんて、総合的なものだから軍事だけではないはずだと思います。
「国家百年の計」の出典は『管子』だそうです。もともとは「百年之計」ではなく「終身之計」なんだそうです。「一年之計莫如樹穀。十年之計莫如樹木。終身之計莫如樹人。一樹一穫者穀也。一樹十穫者木也。一樹百穫者人也。」えー、書き下し文は「一年の計は穀を樹うるに如くはなく、十年の計は木を樹うるに如くはなく、終身の計は人を樹うるに如くはなし。 一樹一穫なる者は穀なり、一樹十穫なる者は木なり、一樹百穫なる者は人なり」です。いわゆる『管子』の「三計」ですね。
「今日を楽しむものは花を活けよ 一年先を楽しむものは花を植えよ 三十年先を楽しむものは木を植えよ 百年をおもんぱかるものは人を育てよ」という言葉もあるそうです。
 「石油は無尽蔵にあるんですわ」とアラブの王様が贅沢三昧をして「国民から税金はとりませんよ」とおっしゃっていても、男女の別なく世界の文化文明、科学技術や詩歌をしっかり教え育むということをしていなければ、やっぱり危ういなぁ、と私などは思ってしまうのです。ええ、こんなことを書いたからといってアラブの王様は怒らないでね。私は暑かったり寒かったりする日本の片隅でチマチマと土を耕してはタネをまいて米を収穫している極東の男なんですからね(笑)。

 先日、妊娠している女性がコロナになり、ECMO(エクモ)で治療している時に病状悪化で意識がなくなり、医師が夫や家族に「奥さんの生命を第一にするのか、お腹の赤ちゃんを第一にするのか、どちらか決断してください」と迫ったときに、ご主人が「妻の生命を一番に。」と返事をしたら、15分後にその奥さんが意識がない中で産気づいて、保育器でなんとか育つギリギリで出産。意識はないのに赤ちゃんが保育器でなんとかぎりぎり育つのを知って出産したのか。また。赤ちゃんもお母さんの体がギリギリなのがわかってもう出なきゃ、と思って出てきたのか、奇跡の出産で、その後は母子ともに元気に回復しつつある、というニュースがありました。
 かと思えばウクライナでは病院が爆撃されて赤ちゃんを抱えたお母さんが泣いている映像が流れ、シェルターになっている地下鉄の駅で、一日に十数人の出産があったというニュースを聞いたり。もちろん出産は病気ではないとはいえ衛生状態のよくない、設備のないところでの出産は危険なこともおこりうるでしょう。
 『未来のミライ』を観たばかりだし、あれこれ思いは揺れます。

 今日は東京大空襲の日。もちろん空襲をうけたのは東京だけではありませんが。

11日(金)
 というわけで、外が明るくなってきました。東日本大震災の11年目の日。もちろん震災は大昔から全国各地であったわけですが。でも今を生きるものとしては過去から教訓を得て現在が穏やかに暮らしていける世の中でありたいです。百姓としては少々汗にまみれたり、少々雨に打たれたり、少々泥だらけになることは厭いませんので、日本の国のリーダーさんたちにはよろしくお願いしたいです。



  送球は花野へ打者は三塁へ     小島明

 おもしろくたのしい句だなぁ。

 というか、たくさん書いているなぁ。夜中に書いたラブレターみたいに、朝、読み返したら恥ずかしくてどうしようもない文章というのもあるからなぁ(笑)。