現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

「みどり豊」の完売と『ハッピー・リタイアメント』のことなど


31日(日) 大晦日
 ああ、知らぬ間に大晦日。なんだか暖かい一日で、曇りときどき雨。
 朝から掃除や買い物など。玄関周りと窓拭きをする。雨が降ったりしているので、窓拭きもあまり気合いが入らず、でもまあまあ拭いて回る。
 私の部屋の掃除もしたけれど、いっこうにすすまず。というか机周りの整理だけでやたらと時間がかかってしまう。

 ちょっとお知らせが遅れてしまいましたが、有機栽培米「みどり豊」が完売いたしました!ありがとうございました!たいへんありがたくうれしく思っております。毎年のようにはやく完売してしまうので、もうすこし作付け面積を増やそうかと思い続けているのですが、これが、なかなか、雑草対策に手間ひまがかかってしまうので、なかなか増やせずにおります。2024年も「みどり豊」は同じ面積にするつもりです。がんばりますぜ。ありがとうございました。引き続き「コシヒカリ」「秋の詩」もよろしくお願いいたします。

 2015年に放送されたという『ハッピー・リタイアメント』をアマゾンプライムビデオで観る。佐藤浩市八嶋智人石黒賢石田ゆり子なんかが出ています。あ、あと浅野温子も。テレビドラマではよくあることだけれど、ラストのセリフが臭すぎる。ま、でも楽しめました。展開は思った通りにすすみましたけど(笑)。原作は浅田次郎ですけど、たぶん脚本がもう一つなんだろうなぁ。そんな気がします。


 大晦日なので、例年、この一年を振り返ることをしているのだが、まあ、でも、今年は暑い夏でした(笑)。それから作業所のことでバタバタ。
 それからもう一つ。
 来年は滋賀県の新品種「きらみずき」を作付けすることにしました。「JAS認証の有機栽培」か、あるいは「除草剤以外の農薬と化学肥料を使わない環境こだわり米」で作ってくださいという、けっこうシバリのある栽培基準になっているので、ご近所の農家は不平が多いようです。「せっかくおいしいお米が出来たようなのに、有機肥料を使わんとあかんとか、クスリは除草剤しか使えんとか、カメムシの被害やいもち病にも、みんな神経とがらせているのに、ハードルがすごく上がって、普及せんのと違うかなぁ。普及しないのはもったいないでしょ?」というようなご意見です。おっしゃっていることはとてもよくわかります。
 まあ、実際のところ、そうなってしまうかもしれませんね。わかりません。

 でもね。
 このところの農政の流れは大規模化ですよね。スケールメリットで儲かる農業にしましょう、ということです。たくさんの耕地を管理して、大きな機械を入れて、一人で管理する面積を増やしてくださいね、ということです。そうすれば農機の大手メーカーも儲かるし、化学肥料や農薬のメーカーも儲かるでしょう。そういうやり方で農業するところには、補助金もだしますよ。という政策です。そういう農政ですね。だからうちのような農家にはあまり助成金も降りてきません。というか、すでに大規模にやっているところにしか助成金は降りてこないのが実態でしょう。これから農業頑張るぜ、と思っていても、規模が小さいと「残念ですが・・・」ということになります。要するに食料自給率は上げたい、っておっしゃいますが、これ以上農家の数は増やしたくないし、本当は減らしたい。補助金をもらってもらって政府の言うことをきく農家だけを増やしたいわけですね。「みどりの食料システム戦略」というのもあって、有機農産物を増やそう、という政策ですけど、あーた、宣伝は、宣伝として、ぜんぜん肝心の予算が違うんですから・・・。「本気でやろうとしてるんですか?」と言いたくなりますが(笑)。
 そんな中での、規模拡大路線だけでは栽培が難しい「JAS認証の有機栽培」か、あるいは「除草剤以外の農薬と化学肥料を使わない環境こだわり米」で新品種のお米を作ってください、と滋賀県はおっしゃるわけです。うまくいくかどうかはわかりません。意気に感ず!というようなサムライのような心意気で栽培するわけでもないのですが、有機栽培農家としては、ま、いっぺんやってみよか。とは思っています。試食はしてみましたら、確かにおいしいお米でしたし。

↓年末の日本農業新聞のコラム記事です。

 あーた、江戸時代と同じ農政で、百姓は生かさず殺さず、では日本の農業は衰退するばかりです。日本の工業製品を外国に高く売るために、外国の農産物を安くどんどん買います。というような食料戦略でこの先やっていけそうにないのは、目に見えているような気がするのです。
 日本の国土は全体的には急峻で農地にするには不適な土地も多いし、大規模農地にも不適なのですが、ありがたいことに雨や雪の降水量は豊富で、働くことに真面目な国民性ですから(そうしなければ生きてこれなかったということでしょうが)、高品質なおいしい農作物をつくることのできる風土です。当たり前ですがきれいな水がある、きれいな土がある、というのは、農業にとってはなにごとにも替え難いとても大事なことです。ええ、そうやって私の両親もめちゃくちゃに働いておいしい米を作ってきたのでしょう。
 日本の国土のありようを思うとき、大規模化にはやはり限界があるような気がします。スケールメリットで儲けようという考え方には限界を感じるなぁ。というかそれもいいけど、それ一本だけでは無理があると思うのです。

 僕の持っているパソコンの辞書『スーパー大辞林』にも出てこないのですが、「身土不二」という言葉があります。「しんどふじ」とも「しんどふに」とも読むようですけど、「身と土、二つにあらず」ということですね。もともとは仏教の教えの言葉らしいですけど、今は食の思想というか「その土地で育ったものを食べて暮らすのがよかろう」というような意味で使われていますね。身と土は一体だということなんでしょう。
 人の身体の中の腸内細菌とか、健康維持にものすごく大事なんだそうですが、そういうものはその暮らしている場所の土の中の細菌とすごく関係があるんだそうです。要するに食べ物によって腸内細菌のタイプや数も変わってくるということなんだと思います。
 新聞には「地産地消」だけでなく「国産国消」なんていう言葉まで見るようになりましたが、消費者のみなさんの意識というか、お考えはどうなんでしょう。
 食料品が安いのはありがたいことでしょうけれど、労働力の安い外国の安い農産物を輸入するという食料戦略でいいのか、そういう状況・戦略がいつまでも続くのか。
ちょっと考えていただけるとありがたいです。あ、いや、別にうちのお米を買ってください、と言っているわけではなくて、食料安全保障とか食糧自給率とか、そんな大げさな話でもなくて、新鮮で安全でおいしいものがいつでも食べたいとか、そういう当たり前のことなんです。家の周りに畑があれば、すぐにおいしいものが手に入るんですけど、私は小さくてもいいので、畑やプランターがあって、野菜でも花でも生きているものが身の回りにあれば、生き物のこともわかるし、生命の尊さもたくましさも感じられるし、そうなればすこしづつ食べ物や食料や農業に対する意識も変わっていくかなぁ、と思っています。
 食べものは、基本、生きていたものですからね。肉も魚も野菜も穀物も。命あるものを食べているわけですから。ニンゲンは命あるものを食べずにはいられないわけですから。

 本年もみなさまにはお世話になり、ありがとうございました。
 来年もよろしくお願いいたします。