現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

12月の小谷山の雲と倉本聰のインタビュー


動画は今日の午後の小谷山から金糞山にかけての山と雲の動画です。今日は全国的に寒かったようで、近畿の北部や北陸のあちこちで雪の便りが聞かれましたが、このあたりは降りませんでした。雨雲レーダーみても、このあたりだけぽっかりと雲が抜けているんだなぁ。ありがたいことでしたが、風はむちゃくちゃ冷たかったです。
草野川の堤防にカメラをセットして、堤防下に車を停めておいたのですが、なにせ2時間半ほどの撮影時間ですから、豆の刈り取りをしている人、犬の散歩に来る人があって、なんだか車の中で本を読んでいたのですが、ちと恥ずかしかったです。


そんなこんなで水上勉良寛』読了。水上勉良寛を通しての人間観察の眼に感心もしました。


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朝日新聞 12月9日朝刊『北の国からTPPを考える』 脚本家 倉本聡さんインタビュー
以下、その要約。

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■TPPの議論どう思いますか。
「私は経済の専門家ではないし、直感的な言い方しかできないけど、土に触れたことがない人たちの議論が続いていますね。それで大丈夫なのか不安感があります。」
■不安感、ですか。
「例えば、農産物で言えば環太平洋のどこかから何時でも持ってこられる、という考え方でしょう。でも、本当にそうなのかなあ。石油はどうですか。いずれ枯渇するでしょう。石油がなくなったら、輸送がものすごく打撃を受けますよね。モノをどっかから自在に持ってこられるということも、30年、40年は持たないように思います。もう少し長い目で見据えないと間違える気がしますね。全世界の原油の残量は、富士山一個分の容積に満たないと言われています。そこから、中国やインドもこれからもっともっと採って行くわけです。非産油国は、ものすごく弱い立場になると思うんですよね。日本は第二次大戦が始まる前に、そういう状況になったでしょう。」
■海外から持ってこられなくなったら、その分もまた国内で作ればいいのでは。
「そんなに簡単じゃありませんよ。私たちも土の改良に10年近くかかったんです。農薬づけの土地を十町歩買って、有機でやろうとしたら雑草や虫との闘いでした。山から落ち葉を拾ってきて入れたり、ニンニクをすりつぶして殺虫剤代わりに撒いてみたり、いろんなことをやりました。でも、土が良くないから育たないですね。最終的に十年目くらいに炭を焼いたんです。炭を粉にして土に混ぜたら、そしたらね、やっとミミズが出てきたんですね。感動しました。」
「近所の農家の方達もそういう工夫もみんなやっています。ミニトマトを植えてみたら虫がいなくなったとか。そういう技術が今の農村の老齢化で若い世代に伝わっていかないんですね。若い世代は米国流の農薬を使い石油を使い、いわば工業化された農業に慣れきってしまっています。だから、石油がなくなったらどうしていいかわかりません。土をいじると、新たな発明があるんですよ。その成長を一度、止めてしまったら、回復は難しいし、消滅してしまうものもあるんです。」
■TPPは富良野の農業も壊しますか。
富良野の農家さんもスーパーに行って安いものを買っちゃうでしょうね。これは人間の本能だし、農村は自ら非常に矛盾してしまう。」
「数年前に、原油が高騰して漁師が漁に出られないというニュースがありましたね。あれはマネーゲームでした。あの時、農家の五十代の人に石油がなくなったらどうすると聞いたら、 80歳近いオヤジなら農耕馬を使うだろう、でも、俺は馬の使い方も知らんし、飼い方も知らん、と。石油を使わない古来の農業は、すでに伝承されていないんですよ。このことがね、一番、恐いんですよ。」
■農業を知らない人が多すぎるのでしょうか。
「東京から見ていると、北海道がだめなら九州なんかから持ってくるから、気象の影響で農産物が年々で変わっていることがピンと来ていないんじゃないですか、年によって不作の地域があることが。東京の目線でみんな考えちゃっているんじゃないでしょうか。」
「農林漁業は統御できない自然を相手にするところから始まっている。工業は、すべてを統御できるという考え方に立っている。この違いはでかいですよ、統御できるもので勝負して、統御できないものは切り捨てる。そういう考え方が、TPPの最大の問題点だと思えるんです。」
■統御できないものは、放っておけばいい。そんな考え方もあるのでは。
「自然を征服できなければ、その土地を捨てて、次の場所へ移ればいい。それが米国流の資本主義の思考じゃないかな。でも、日本の農業は明らかに違う。土着なんです。天候が悪くて不作の年は、天運なんだと受け止め、歯を食いしばって細い作物で生きて行く、それが農業の本来の姿でしょう。」
■農業は弱いものですか。
「いや、生きる手立てとしては、最も揺るがないものですよ。僕自身、終戦後66年の中ですごく不安感があったんです。どんどん豊かになって行く暮らしが続くわけがないっていうね。だから僕は地方に移ったし、じゃあ、地方で生きていくためにどうやったらカネが一番かからないんだって言ったら、やっぱり自分の身体をつかうことですよ。」
「役者やライターを育ててきた富良野塾では26年間、三食を280円でまかなってきたんです。野菜の四割は、規格外で畑に捨てられちゃう。それを拾ってくればいい。細いにんじんや小さな玉ねぎがたくさんある。富良野塾をやってみて、ああ、食えちゃうんだって思いましたね。自給自足の弥生式をやろうと思っていましたが、採取の縄文式です。」
■むしろ社会の仕組みの方がニンジンを捨てさせている。
「考えてみてください、それって本当は商品なんですよ。刻んでカレーに入れたら変わらないのに流通には乗らない。捨てられたニンジンを集めて浜松あたりまで運んで売ろうとしたことがあるんです。 20人くらいで二、三ヶ月やったけど、十万円にもならなかった、輸送経費がかさんでね。がっくりしましたよ、なるほど、社会の仕組みはこうなのかと。」
■そういえば、北の国から田中邦衛さんが演じた黒板五郎も農業をしていますね。
「ええ、カネがかかってないでしょう。黒板吾郎のやっていることは。あの人、税金払ってないんですよね。そのかわり生活保護を受けることも年金をもらうこともないのが当たり前だと思っているわけですよ。そこまで徹底しているんです。これは僕の理想なんだけれど、そこまでいけないから黒板五郎に託したわけですよ。」
■倉本さん自身も、土をいじるようになって変わりましたか。
「そりゃあ変わりますよ。まず、毎朝起きたときに、天気が心配ですよね。窓を開けた時に、今日は冷えているな、とか。今日はぬるいな、とか。雲を見てどっちに流れているかな、今日は崩れるな、とか。うちの近所で十勝岳がちょっと出ると見えるんだけれど、十勝の雲が上にあがっているときは晴れる、山沿いに下がっている時は崩れてくる。習慣になっちゃってますよ。畑の手入れがありますからね。冷え込む日に霜対策をしなかったら、一年分の収穫がパーになっちゃう。自分の力が及ばない自然を相手にすると、人間は変りますよ。」
■畏敬の念が生まれると。
「生まれますね。自然を統御できるなんて、思いあがりですよ。なぜ、経済って、こんなに偉くなっちゃったんですかね。日本は確かに経済大国になった。でも日本というスーパーカーに付け忘れた装置が二つあると思う。ブレーキとバックギアですよ。みんながブレーキをかけることを恐れ、バックは絶対にしないと考えている。前年比プラス、前年比プラスと、ひたすらゴールのないマラソンを突き進んでいる。」
■日本は畏れを知らない国になっている。
「ええ。日本は、小国でもいいから尊敬される国をめざすべきじゃないですか。私はかねがね、ブータンが一つの理想だと思っている。ブータンの国王が先日、来日しましたよね。国王の姿を見ていると、実に素朴で、田舎の村長みたいだけど、日本人より人間の格が上だという気がするんです。王様の爪の中がみたかった。土で黒いんじゃないかって気がしたんですよね。」
■今の社会や経済のシステムと、その延長線にあるTPPは受け入れ難いですか。
「高校生の頃、本当にうちは悲惨な状態だったんです。そういう時におふくろがお年玉でくれた500円札は、どうしても使えなかった。他の500円札は使えるんですよ。でもおふくろの500円札は、500円を示す紙きれじゃなくて、もっと大事なものとして自分の中にあるわけですよね。愛情が注がれているから価値が上がってくるんですね。その部分をTPPも今の政治も忘れちゃいないか、って気がします。」
「TPPって危機に陥っているユーロ圏と、どこか似ていませんか。最近の混乱は、通貨の統一と同時に、思想も民族性も一つにできると錯覚したところに問題があったと思うんですよ。ブータンブータンで認めて、日本は日本の生き方を認めて、その上で互いに助け合う。それが、これからの人間の英知なのではないですか。そういう気が僕はするんだけど、間違ってますかね。」
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とてもよく判る話であります。