現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

畔塗りとカレル・ヴァン・ウォルフレン氏の記事

終日、概ねいい天気。温かい。ありがたい。
どうも昨日の雨で苗代の水位が上がり過ぎたみたいで、ちょっと心配。もちろん尻水戸の高さを調節しているのだが・・・。
午前中はバタバタ。
午後からは畔塗りにでる。昨日の雨で畔もしっかり湿っているだろうといつも乾き過ぎていてうまく塗れない田んぼの畔に出向く。ふふふふ。概ねうまく塗れました。
田植えはまだまだ先の田んぼなのですが、どうもね、ここ数年の観察の結果、畔塗りを少々早めにやってもいいのではないか、と思うようになっているのです、今年は(笑)。
早く畔塗りをすると当然早く草が生えてきます、それを嫌ってできるだけ遅く畔塗りがしたい、と思っていたのですが、遅く塗ると、周りの田んぼに水が張られたりして、その水が水路や畔から漏れてきたりもするので、どうも畔が塗りにくかったりしますし、遅く塗ってもその頃には気温が高くなっていますから、すぐに雑草が生えてきます。今はまだいくぶん気温も低めですから、すぐに雑草が生えてくるということもありません。しかもしっかりとした畔が塗れれば、風雨にさらされてそこそこ安定して丈夫な畔になっていそうな。早く塗るとモグラやネズミの被害を受けやすいのだが、今年は木酢液を使って見ようかと思っている。畔に薄めた木酢液をたらすと、その匂いを嫌ってモグラやネズミが退散する、という話を聞いたのだ。うーむ。


今日の日本農業新聞の特集記事「日本の進路」にオランダ出身の国際ジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏のインタビュー記事が載っていた。以下その要約。

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米国には、経済と軍事の両面で存在感を増している巨大な中国に対して包囲網を築きたいという考えがある。米国の軍事戦略の中に日本は身を置き、中国を封じ込めようとしている。環太平洋連携協定(TPP)は、こうした政治的な戦略の中に位置づけられる。
「中国が地下資源や領土、領海などで攻撃的だ」という意見がある事は知っているが、逆に中国にしてみれば、米国と日本が一緒になって圧力をかけていると感じるだろう。米国の戦略にとらわれずに、中国との間で関係改善を図ることが日本にとって必要だと思う。
私は、自由貿易に対する共感を以前は確かに強く持っていた。知り合いの大学教官等からは「ウォルフレンさんはこちら(TPP推進側)の人じゃなかったのか」とよく聞かれる。だが、TPPは経済の話ではなく、自由貿易を目指すのが目的ではない。本質は、米国の企業に非常に有利な仕組みを押し付けようというもので、貿易を自由化しようというものとは異なる。極めて政治的で、不公平な協定だ。
「TPPに参加すれば自由貿易ですべてがうまくいく」という宣伝がされているが、それは間違いだ。政府は何らかの形で自国の産業政策を行うのが望ましい。これは一種の保護政策も含まれる。第二次大戦後、日本経済などもそうして発展してきた。
TPPは、政府と外国企業の間の関係を大きく大きく変えかねない。両国の経済政策や規制等についてこれまでは政府間で交渉してきたが、TPPでは政府と外国の企業が直接渡りあうことができるようになる。政府はこれまでのように自国産業を育成しようとする政策をしにくくなる。投資家・国家訴訟(ISD)条項と呼ばれる制度を通じて外国企業は、「不当に競争を疎外された」として政府を直接訴えることができるからだ。
日本の政治家は訴訟を甘く見ているのではないか。「問題」があれば米国から大勢の弁護士がバッタの群れのように海外に出かけて違反を探し出し、訴えるだろう。米国では勝訴に持ち込み一定割合の報酬を得るため、弁護士が血眼になってあら探しをしている。日本にとって大きな災難が待ち構えている。
日本で多くのメディアが環太平洋連携協定(TPP)に賛成の立場だと聞いている。編集者が「貿易を拡大していく」というフレーズに惹かれる気持ちはわからないでもない。しかし、本質は違うところにあることを知らない。一つはあまりにもTPPの登場が突然で、理解する時間がなかったのだろう。「韓国の成功に続け」みたいな議論があるが、実際には韓国は自由貿易協定(FTA)でひどい状態になってしまうと私は思う。
日本のジャーナリズムでは、農業や農村に関心が向けられていない。東京などの都市があまりにも大きく、ジャーナリストに限らず農村との距離がありすぎる。私はオランダのアムステルダムから車で30分のところに住んでいる。海面からマイナス四メートルの干拓農地だ。二軒先は酪農家で、牛が草をはむのが当たり前の景観だ。
TPPが日本の景観を壊すことを強く主張したらどうか。農業が食料安全保障に結びついていると強調することは理にかなっている。同時に稲作が日本の田舎の景観を形作っている。だから農業が必要なのだと言えば、多くの人たちが賛同する。
仮にフランス政府が交渉したら「景観は私たちのものだ。この件で妥協はしない」と主張しておしまいになるはずだ。残念なのは、日本の農村は美しいのに農民がそれに気づいていないことだ。農村がなくなればカエルも蛍もいなくなってしまう。
私は、TPPの参加の検討を表明した菅直人首相(当時)も、無名の時代から知っている。市民運動家出身で、普通の人や障害のある人たちのことを配慮できる政治家だと思う。以前、厚生大臣として薬害エイズ問題で成果を出した。しかし、財務大臣になると、パワフルな官僚らに丸め込まれてしまったのだ 。
「TPPに参加して外部から農業を改革しよう」という議論にも賛成できない。農業は国にとって大切なものであり、それを外圧で変えてしまえというのは乱暴だ。東日本大震災で苦しんでいる農家が多くいる中で、問題が多いTPPによってこれ以上の負担を被災地に強いるようなことには反対だ。
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昨日は「軍事を伴わぬ戦争だ」「グローバリズムは幻」「国守る心で阻止せよ」という見出しのつく記事で、漫画家の小林よしのり氏のTPPについてインタビュー記事を載っていた。よくわかるのだが、農業新聞の載る記事なんだから、小林氏ももうすこし上品な語り口も使い分けたらどうかと思うのだが。


しかし、なんだなぁ、ブログには政治的なことは書きたくない、とずっと思ってきたし、今でもそう思っているのだが・・・。いやはや、というか、やれやれ、というか。