現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

事務仕事と無農薬の田んぼの尻踏み


29日(水)
朝から雨。
で、犬の散歩のあと、田回りに出る。


で、終日、事務仕事。
といっても一日ずっと机に向かっていたのではなく、都合、郵便局には3回行ったし、農協には2回。支払いにお店2ヶ所をまわった。夕方には日曜日の運動会の弁当と懇親会のオードブルを注文するために近所の居酒屋に行って、生ビールを2杯飲んでしまう、というおまけもあったが、これも事務仕事の一環なのである。
おかげで、ちょっとたまっていた仕事はずいぶんと片づけることができました。預かっている通帳の記帳やら帳簿や領収書綴りも整理しました。


ラジオを聴いていたら、雑誌『上方芸能』代表の木津川計氏が、亡くなられた人間国宝狂言師茂山千作さんについてふれながら、「私の考える大往生」ということで、いくつか大往生の条件をあげておられました。


1. 苦しむことないやすらかな死。

2. 年齢は男は85以上、女は90以上。

3. 悼まれる死でなければならない。

4. 寝たきりは一年以内。

5. 身近な人にみとられる。



人間国宝で、人柄がよい人で、家族を慈しみ、弟子を大事にした人だったと木津川計氏はおっしゃっていました。
しかし、千作さんが大往生なのは間違いないのでしょうが、なかなか人の死を大往生かどうかまだ生きている人間が判断するのは難しいことですね。大往生でも非業の死でも。


30日(木)
午前中は雨が降ったり止んだり。午後遅くなって雨はやんだけれど、曇り空。
午前中はトラクタで尻踏み。今回は小さい田んぼばかり。菜の花緑肥の無農薬栽培の田んぼの尻踏みもする。
午後、尻踏み後の田んぼを見て回って、馬鍬で四隅を中心に直していたら、小学生の低学年が下校してきた。


昨日の日本農業新聞のコラム。
水をたたえた田を風が渡り、若いみどりの苗を揺らす。浅春から初夏まで、田植え前線は、南北、東西3000キロの列島をゆっくり巡る▼稲は南方生まれなのになぜ寒い地域でいい米が取れるのか。思想家吉本隆明が知人の篤農家に尋ねた。答えは明快。「毎日のように、時刻ごとに観察し、その表情に対応して気配りすれば、いいお米ができる」。寒さが厳しいほど観察と対応を怠らないと。吉本は「これに倣わん」と感銘する。遺作の随想『開店休業』の挿話である▼たゆまぬ品種改良と農家の創意が、長い列島での米作りを可能にした。料理研究家の辰巳芳子さんもいう。「南方の植物を北海道の中央部でも生産できるようにした。どんな苦労だったでしょうか」(『味覚旬月』)▼だから辰巳さんは水田を見ると胸がいっぱいになる。稲作が日本人の資質をつくり近代化を導いた。それが今や食に定見のない国になった、と手厳しい▼「米の自由化にしても国際政治のバランスでとらえてしまう。米というものを米粒の段階でしか考えないからです。米というものは、米粒の段階ではなく、稲作、水田というレベルで考えてほしい」(同書)。8年前の言葉が、今日のTPPを予見する。米粒の向こうに水田を思い描ける政治家、官僚は幾人いるだろう。


ま、百姓としては、首や背中や足の裏に溜まってきている疲れを癒すべく、小瓶のウイスキーを買ってきては、これを舐めるばかりである。
フジ子・へミングの「ラ・カンパネラ」と小澤征爾指揮の「ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14 第4楽章:断頭台への行進」を聴いていたら元気が出てきたような気がする。というかウイスキーが回ってきたか。