現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

年貢のあれこれと大停電(?)のこと

アントン・コルベイン監督『誰よりも狙

4日(火)
年貢を「秋の詩」で納める地主さんのところへあちこちお米をもっていく。これで、お米の分は概ね納め終える。
夕方から完全無農薬有機栽培米「秋の詩」と「みどり豊」の籾擦り。「秋の詩」はそこそこの収量。「みどり豊」は恥ずかしくて口に出せないような収量。でも、もちろんお米の粒はとってもきれい。
あんまり収量が少ないので、こんなことやっていていいのか、大丈夫なのか、どこかに間違いやミスがあるんだろう、とあれこれ考えてもすぐには答えが出ない。ま、続けてやるしかない。


5日(水)
台風18号が夕方からやって来るというので、朝一番に米を農協に出荷し、作業所の外回りで、いかにも風に弱そうなあれやこれやを撤収する。うちの作業所は秋になると銀色の蛇腹のパイプ(ホームセンターで空調用のパイプとして売られているやつです。)がふらふらと何本か外からぶら下がったりして、あやしいサティアンのようにも見えるのだが(いや、見えないか。サティアンも、もはや通じないかも。)そういうもろもろを外して強風に対処する。当然、掃除しつつになるので、けっこう時間がかかる。



午後はだんだん風が強くなってきたのだが、15時過ぎから17時44分まで停電騒ぎになった。ええ、停電です。15時過ぎから45分くらいの長い停電があり、その後一旦回復したように見えたのだが、また何度も断続的に停電が繰り返されて、また長い停電。
えーっと巷の情報によると停電はうちの村のうちの220戸と隣村の10戸ということらしい。これがあんまり停電が解消されないので、外に出てみると、信号は消えているし、銀行や郵便局のATMもダウンしているらしい。うちの家からは隣の小学校の校舎が見えるのだが、教室は電気が消えているけれど、保健室だけは明かりがついている。太陽光発電の関係で蓄電池が働いているのかな?
とにかくみなさん停電が長いものだから、けっこうぞろぞろと家から出て来られますな。信号が消えているので、お巡りさんがやってきて、笛と赤い誘導灯を手に交差点の真ん中で交通整理。周りにも二人おられて三人で体制ですな。もっとも最初の15分ほどは張りきって交差点の中央で誘導されてましたが、車の通行量もそれほどでもないし、お疲れになられたのか、一人が中央でするのではなく、三人がそれぞれ道路の脇から赤い旗で整理されるようになりました。
関電の工事車両が警察のパトカーみたいなサイレンを鳴らして走ってこられたんですが、いや、どこが原因で停電しているのか、わからないようで、トランス(えーっと変圧器ですな)のついた電柱を一本一本、双眼鏡で眺めたり、登ったり、工事車両についているゴンドラで近づいて観たりしておられるのだが、原因の一本が見つからないらしい。関電からは広報車もやってきて「こちらは関西電力彦根営業所の広報車です。ただいま停電事故でたいへんご迷惑をおかけしております。全力で復旧作業をいたしておりますので、もうしばらくご不便をおかけしますが、お待ちくださいますように。」というようなことをアナウンスして走り回っている。
台風で雨は降っていないが、風はそこそこ強い。関電の作業員の方の顔はこわばり目は血走っているようだ。もう停電から二時間以上経過している。あちこちから苦情や怒りの電話などが来ていることだと思われる。僕は近所の居酒屋のご主人と、まあ、こんなこと怒っても仕方がないんだが、ま、怒りたくなるし、一言いいたくなるわなぁ。などと話をしている。まあ、うちはとりあえず停電になっても、トイレの水が自動で流れなくなったり、パソコンがプツンと切れてしまったので、データを心配するぐらいだが、居酒屋のご主人は「うちは冷蔵庫のなかの品物を心配するわ。」とおっしゃっているし、うちのご近所には自宅で酸素吸入をしておられるご主人がおられるので、その奥さんが「機械が動かないと困るんやわ。」と不安げな顔でおっしゃるのである。居酒屋のご主人は、「百姓はこういうときにはやっぱり強いな、電気がこなくて真っ暗なら、寝てもたらええんやで。強いわ、百姓は。」などと半分冗談だろうが、おっしゃるのである(笑)。
ま、現代社会は、現代田んぼ生活もふくめて、電気なしではまともには暮らしていけないシステムになっているし、みんなが電気に頼り切っているので、二時間以上も停電が続くと不安になるのである。僕も幼稚園の頃に一度、あの時も台風だったと思うけど、近所の電柱の電線が切れて垂れ下がってしまって、停電になったのを憶えている。夜だったし、これも不安になってロウソクをつけた。でもあの時も一時間もかからないうちに復旧されたような気がしている。
うちの村にトランスがあがっている電柱はたくさんあるのだ。ところがだ、なんだかうちの家の近くの電柱の方から、バシッ、バシッ、バシッ、とときどき音がしていることに気がついた。ええ、私がです。私が見つけました。ええ、私が見つけたんです。近づいていってみると、やっぱり音がする。この電柱だ!と周りを見ると、こっちに走ってくる若い関電の工事の人がいる。僕が電柱の方を指さすと、なんだかうれしそうな顔でうなづいている。その若い工事の人は「こっちです!」と後ろを振り向いて大声を張り上げる。「わかりました!この電柱です!」とさらに大声を張り上げる。するとたちどころに三台の工事用の車両が猛スピードやってきて、タイヤを鳴らしながら急制動。リーダーらしい40歳前後の方が、大声をあげて指示を出しはじめた。下から電柱をよじ登る人、ゴンドラで上がる人。下から上への指示も、上から下への返事も、とにかく大声なんである。まあ、強風の中の作業だし、焦燥で自然と声も張り上がってしまうのかもしれないが。リーダーは下から、あーしろ、こーしろと盛んに指示を出しまくり、上の若い作業員も大声で復唱したり、作業の様子を伝えている。しっかり訓練されているんだろうな、大声の中テキパキと作業は進み、電柱が見つかってから線を交換して5分ほどで作業は完了。リーダーは「17時44分、復旧!」とどこか誇らしげに電話で報告しておられます、もちろん大声で。また「おーい、風が強いで、気をつけてゆっくり降りてこい!」とも。
一緒に作業をずっと観ていた高校生くらいの男の子は、電気が流れて信号が点灯し、街灯に灯が入ると、「おお!点いた!」と思わず独り言のような声を上げていた。
ええ、これが停電の原因の電柱の第一発見者である私の二時間半にもおよぶ大停電のリポートでした。こちらからは以上です。


6日(木)
午前中は年貢をお金で支払う地主さんへの振り込み手続き準備など。
それから午後は精米と発送。


そういえば、アントン・コルベイン監督『誰よりも狙われた男』(2014)をiTunesで観る。うーむ。楽しめました。おもしろい話だと思ったけどジョン・ル・カレが原作なんですな。スパイというか諜報機関の映画です。主演のフィリップ・シーモア・ホフマンがいい味を出しています。ま、煙草ばかり吸ってますが(笑)。


秋の稲刈り等でバタバタしていたので、ゆっくりニュースを観たり読んだりすることもできないのだが、国会がはじまって、なんだかなぁ、と言いたくなる様子が、FacebookTwitterで流れてくる。世の中はみな公平に営まれているとも思っていないし、人それぞれ考え方はいろいろだということも肝に銘じているのだが、真面目に働いていけば、家族みんなが穏やかに世間並みに暮らしていける、とせめて錯覚させてくれる世の中でないと。