現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

事務仕事と雨上がりと中島正『自給農業のはじめ方』


31日(月)
上の写真は個人的にはなかなか気に入っているiPhoneで撮ったパノラマ写真。パノラマ写真は難しいです。プロカメラマンはパノラマ写真をどう思っているのだろう。とにかくプロは天気が良くないとパノラマ写真なんて撮る気にならないと思っているのではないか、という気はしている。
天気は良かったが、気温は低め。
午前中は車庫の整理など。
午後は発送した新米についての事務処理と机の上の整理整頓。ああ、なんでこんなに整理整頓に時間がかかるんだ。
昔の職場の隣の机の人が、「わし、毎日探しもんばっかりしてるんやわ。ほんま、見つからんもんばっかなんやけど。どないなったるんやろ。さっきから書類探してるんやけど、見つからんがな。さっきから言うても、仕事の合間にもう半日さがしてるんや。わしの人生、探し物の時間はいったい何割なんやろな。どないなったるんや。ツジイさん、人生は探し物や。そういえば、あんたのカラオケの♪探し物はなんですか?という歌、あれはええな。わし、さっきからあの歌が、頭の中で鳴ったるんや、ほんまに。どうしてくれるんや。わしの人生はないもんを探してばっかりや。」などと自嘲的にいささか哲学的でもある独り言をいいながら、書類を探しておられたのを思い出しました。<
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1日(火)
上の写真は先日来畦畔の草刈りをしているので、その刈った草が刈れてきてこんな状態になっているんですが、雨上がりの朝の光でとても美しいと感じで何枚もあちこち撮りました(笑)。土というのは、こういうものが毎年積み重なってできていくものです。
昨夜から朝方まで雨。
午前中は精米など。午後はあちこち役所にいってあれこれ提出や申請など。



中島正『農家が教える 自給農業のはじめ方 自然卵・イネ・ムギ・野菜・果樹・農産加工』(農文協)を読了。これはなかなかおもしろかったです。ええ、勉強になりました。
自給自足の生活って、僕はけっこうあこがれています。自給自足をしようと思えば、食べるものを自分で作らねばならないので、基本的に百姓にならなければ自給自足はできないわけです。本業としなくても兼業でも、小さな畑でも。まあ狩猟と採取の縄文前期的な生活は現代の自然環境のもとではむずかしいですから、縄文後期といいますか、弥生時代的な農耕をしないことには厳しいと思います。
でもいくら田んぼと畑があるからといって、21世紀に弥生時代の暮らしができるわけもなく、日銭というかお金をどこかで稼いでこなくては子育てもできません。電気代も必要ですしね。世の中は物々交換ではなくて貨幣経済の世の中ですから。
ですからこの本を読んでも、どうお金を稼いでくるかは、書いてありません。でも自分で食べるものは自分で作る農業の方法は書いてあります。まずは養鶏。鶏卵と鶏肉が取れますね。それからお米は水稲でなくて陸稲。ええ、陸稲というのは以前から気になっていたんです。水稲は機械が必要なんですね。ガソリンや軽油で動く耕耘機やトラクタ、田植え機、コンバインなどなど。で、その前提は水を張れる平らな土地。でも陸稲なら水を張らずに済むので、土地が平らでなくてもすみます。大きな機械を使わなくても播種も田植えも収穫もできます。でも収量も米の味もいささか水稲と比べると落ちるそうです。でもなんとか陸稲なれば平らな土地で水利がよくなくても米が作れるということです。僕が小さい頃は畑で陸稲(おかぼ)を作っておられたのを憶えていますが、最近は見ません。だいたい陸稲の品種の種があるのかどうか。(この本では陸稲の種の手に入れ方も書いてありました。)
で、一人の人間が生きていくのにだいたい5アールの畑が必要と言うのですね。もちろん陸稲の面積も含めてです。1アールは100平方mですから、10メートル四方ということになります。5アールは10m×50mということですね。この畑で陸稲も野菜も果樹も作りながら養鶏をするということらしいです。鶏は50羽からということだそうです。
現実的にはむずかしいと思うのですが、ま、なにかのときに心構えというか志というか、自給農業のやる気とやり方を知っているかどうかは、大きな差になりますよね。


と、あれこれ書きましたが、この本の本当のいいところは実に気合いが入ってるところです。要するになんでもお金を払えば食べ物が手に入る現代社会において、お金じゃなくて、自分で自分の食い物を選んで準備するという志です。それは第六章の「提言 これから農業をはじめる方へ」という短い章にあふれ返っています。以下、項目のタイトルだけ。1)市場原理に惑わされるな 1-1)農作物は工業製品じゃない 1-2)規模拡大路線の弊害 1-3)都会のワーキングプアより田舎の貧乏自給百姓を 2)一人五アールで実現する農ある暮らし 2-1)自分の食い扶持は自分でまかなう 2-2)少量多品目生産で等身大の生き方 2-3)実践-まず隗より始めよ というタイトルだけ見ても気持ちの強さが感じられますし、当然ながら無農薬栽培を説いておられますし、養鶏からでる鶏糞を利用した肥料設計です。ええ骨のある農業ですし、気骨あふれる文体になっています。もちろん全部が全部真似できませんが、読んでいて「安全安心おいしいお米」を標榜する辻井農園としては、百姓の血が騒いだことは確かです。
著者は岐阜県の山村に暮らしておられるとか、隣県なのだが、岐阜は飛騨の国も美濃の国も広くて山村は多いからなぁ、どのあたりで暮らしておられるのだろう。

えーっと左上から右下に向かって、エノキの実、アメリカセンダングサ、ニラの実(種)、彼岸花の葉、サクラの葉、雑草だけになってしまったうちの大豆畑、というようなことです。ええ、大豆はどうなるんだろう。小麦は播種できるのだろうか。いははや。


というわけで、11月です。旧暦では10月2日。神無月ですな。出雲には神様たちが集まるので神有月というのだとか。
しかし、なんだな。高校生の頃、古典の先生から「神無月というのは、日本中の神さんがやな、出雲の国に集まって会議をさあるので、日本全国の神さんが留守になってしまうので、神無月なんや、どうもそういうことらしいで。」と教えていただいた。高校生の時は、なるほど、しかし一年にいっぺん集まって、神さんが何をはなしあわあるんやろ、と思ったのを憶えているが、ま、この歳になると、神さんも、まあ、一年にいっぺん顔を見せあって、お互いにそこそこ健康であることを確認しておられたんではないかな、と思います。病気自慢する神さんもおられたかもしれませんね(笑)。ええ、たいした議題の会議ではなかったように思います。ええ、たいした議題がない会議が一番いい会議です(笑)。主な議題は「縁結び」の情報集めだったのでしょうから。「え?淡海の国の辻井農園?あ、ツジイさんね、ほほう、おぼえがないけど・・・、なるほど、あの時、ちょっと揉めましたけど、縁結びしましたな、その後、どうですか?え?百姓に?そうやったんですか、で、きばってやありますか?え?なるほど、そこそこやってやありますか。今は農業は難しい時代らしいですけど、それなら大丈夫ですかな。え?そうでもない。あ、まあね、褒美をやるほどでもないですか。え?老眼?腰痛?まあ、健康がいちばんということで。」というようなところでお願いします。