現代田んぼ生活 辻井農園日記

滋賀県の湖北地方で完全無農薬有機栽培米の「コシヒカリ」と「秋の詩」と「みどり豊」を作っている辻井農園のブログです。安心して食べていただけるおいしいお米をつくっています。

主食としてのコメと遺伝子組み換え


寒い一日。夜も寒い。


NHKのオンデマンドで『いのちドラマチック シリーズ主食(3) コメ自己愛でつなぐ命』というのを観る。11月9日に放送された30分ほどの番組。その冒頭でこんなようなナレーションがありました。


お米はおかずを引き立てる控えめな味ですが、その栄養バランスはほぼ完璧。デンプン、たんぱく質、カルシウム、食物繊維、脂質、マグネシウム亜鉛、鉄分、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンEなど人が生きていく上で欠かせないほとんどのものが含まれています。お味噌汁と一緒に食べれば、その栄養バランスは完璧に。お米は正に主食にふさわしいスーパー穀物です。さらにお米がすぐれているのは貯蔵性。収穫した種籾は乾燥させれば何年も腐らずに保存できます。しかもそれを水分のある土に播きさえすれば、発芽し、生長して、またたくさんのお米をもたらしてくれるのです。私達日本人の生きる糧であるお米。今日はそのいのちの不思議に迫ります。


なるほどねぇ。いいねぇ。世の中に主食となっている穀物はたくさんありますけれど、お米は栄養バランスとしてすばらしいんだということですね。
番組の中身の話としては、


イネの花は99.9%自家受粉する。自家受粉するということは、他の種との交雑を拒むということになりますが、人類はよりおいしく、収量が多く、病気にも強い品種を求めて品種改良してきました。今、イネのゲノムが解読されて、遺伝子操作で品種改良が速く容易になったと。
耐病性、耐虫性、耐塩性、耐乾燥性にすぐれたイネの品種を改良すれば、もともと主食にふさわしいスーパー穀物のイネですから、人口爆発による世界的な食糧危機にも対応できるのではないか。


と、いうようなお話でした。遺伝子操作、と言っていましたが、要するに遺伝子の組み換えのことなのでしょうか。それから播種して収穫までだいたいふつうまあ半年くらいはかかるのですが、ゲノム解読のおかげで、播種して芽が出てくれば、その葉の先端の遺伝子情報を調べれば、どういうお米になるか、わかるということでした。だいたい播種して2週間でわかるようになるので、今までの半年という時間から大幅に短縮できて、品種改良の時間が短縮できそうだとという話でした。


普通の今までの手順で行う品種改良と遺伝子組み換えによる品種改良と、なにがどうちがうのか、勉強不足でよくわかりません。勉強不足のまま書くのも何ですが、いくらえらい学者先生に大丈夫だと言われても、やっぱりどこか心配してしまうところはあります。
最近、ときどき話題になっているのが、都会のビルの中の無菌状態の中の水耕栽培の野菜とか、太陽の代わりに電灯で育てる野菜。無菌で無農薬で安全でしかも流通コストが安くつく(都会の真ん中で栽培するわけですから)なんてのも、何かが足りないんじゃないかって、思ってしまいます。


枕頭本の日高敏隆『ぼくの生物学講義―人間を知る手がかり』読了。おもしろかったです。最終講義をまとめたものなのですね。僕はこの先生の文章を読むとなんだかいつも元気が湧いてくるような気になるのです。本当です。なんでだろう?
本来、動物というか生き物は自由なものなんだ、というイメージが強く伝わってくるからかなぁ。僕はだいたいのところずいぶんだらしのない人間なのだが、だらしのなさというのは、人間社会の規律の中で生きているからだらしない部分が見えてくるわけだし、“だらしない”というような言葉だって生まれてきたわけだと思うんだけど。だけど僕はそこそこ健康で丈夫な身体で生まれてきて成長し、奥さんという配偶者も見つけて、結婚し、自分の遺伝子を受け継いでいく子どもを四人も得ることができたわけだから、僕も僕の奥さんも生物学的には充分な仕事をしたはずなんですが、人間社会の経済的なことや文化的なことを考えると、まだまだこれからということになるわけです。でももう自由に思い切りやっていいんだ、という自由さを日高先生の文章を読むと感じるんです。やっぱり『日高敏隆選集』は再読、再々読したい本です。


で、今朝はごそごそと枕元をやっていたら『モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号』が出てきて、古川日出男氏による村上春樹のインタビュー記事を再読する。たぶん2009年の春にも読んだのだが、相変わらず古川日出男の作品は読んでいません。うーむ。
でもこのインタビュー記事は悪くないです。
最近出た『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集 1997-2009』の最後にもちゃんと入っています。買っただけでまだ読んでいません。とうわけで、次の枕頭本は『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』に決定。